引っ越して……(京都府) | コワイハナシ47

引っ越して……(京都府)

そのSさんも、半年ほど前にこのマンションから引っ越した。

この部屋での体験が原因ではないという。

ただ、なぜか引っ越してからはあまりついてない気がするという。まるで運やツキがなくなってしまったそうだ。

いろいろあったけれど、みさおさんに守られていたのかな、とSさんは振り返る。

怖い怖いと言いながらも、いつも仲間が居候したり遊びに来ていて賑にぎやかだった。

仕事も順調だった。だから八年近くも住んでいられたのだ。

守られているといえば、こんなことがあった。

阪神淡路大震災の時、比較的京都の被害は少なかったが、Sさんのマンション付近はものすごく揺れた。

忘れもしない一月十七日。寝ていると、ゆさゆさっと肩を揺すられて「こっちへ来て」という女性の声がした。目が覚めるとまだ早朝の五時半。震えるほど寒い。それなのになぜか、その声の言うことに従ってリビングに入って電気をつけてぼーっとしていた。しばらくすると同居しているNさんも起き出して、リビングにそろった。

Nさんも「誰か女の人にここに呼ばれた」と言う。

「お前もか?」と言っていると、どんとマンションが突き上げられて、グラグラッと大きく横に揺れた。

周囲のものがドカドカと倒れてくる。

寝ていた四畳半の部屋に戻ってみると、壁に裸で立て掛けてあったスキーが、Sさんの寝ていた布団の枕の上にエッジを向けて倒れていた。

Nさんの部屋も、倒れた本棚で布団が見えなくなっていた。

ふたりともあのままもし寝ていたらと想像したのも守ってもらったと思ったのも、きっと同時だったはずですとSさんは語った。

「戻りたいですか?」と尋ねると、

「いえ……一度出てしまうともうだめですね」と答えた。

京都の幽霊マンションシリーズ vol.2

不動明王(京都府)

落下(京都府)

ズルッズルッ(京都府)

身の上話(京都府)

ビデオ(京都府)

引っ越して……(京都府)※この話

シェアする

フォローする