うさぎ橋(長崎市鳴見町) | コワイハナシ47

うさぎ橋(長崎市鳴見町)

長崎の自殺の名所といえば、有名なのは西海橋だが、その次に知られるのは「うさぎ橋」だろう。

某レジャー施設へと続く峠に架かっており、三本の橋が連続して設置してあるのだが、飛び降りが発生するのは、うさぎ橋がほとんどだという噂だ。

オカルティックな思考で考えると、きっと、この場所には人を呼び込む悪霊がいて……という風になるのだろうが、実際には橋の色や造形、モニュメントが人の意識に「飛び降り」を連想させるもので、飛び降りるのなら『ここだな』と思わせてしまうのではないかと、私は考えている。

なんといっても、うさぎ橋の入り口と出口の欄干上にはウサギのモニュメントがある。ウサギといえば飛び跳ねるものだ。そのモニュメントが人の心理に働きかけているというのは考えすぎだろうか?

そんな想像を巡らせつつ、我々はうさぎ橋を目指して車を走らせた。

「つがね落としの滝」での探索が終わってから、うさぎ橋を目指したのだが、現地に着いたのは日付が変わる少し前だった。この日は長崎の心霊スポットを合計六ヶ所まわる予定だったので、少し時間は押している。

こちらでも先ほどと同じく、二人ずつに分かれて撮影することにした。

まずは私と後輩の「山本」が二人で橋の撮影に向かう。

標高が高いだけあって空気が冷たく、橋を吹き抜ける風が容赦なく体温を奪っていく。

自殺の名所だという先入観があるため、橋の下で動物達が走り回る音にも過剰に反応してしまう。というか、ここは動物がめちゃくちゃ多い。ガサガサバタバタと走り回る音がそこら中から響いており、まるで野生の王国だ。

「動物がかなり多いね」

何度か橋の底を覗き込みながら進んでいると、群れは過ぎ去ったようで、聞こえてくるのは風の音のみとなった。

そして、橋の出口まで来たところで、入り口と同じウサギのモニュメントが欄干の上にあることに気付いた。それを見た山本は、不敵な笑みを浮かべてこう言い放った。

「濱さーん、これウサギっすよね? 自殺者もウサギみたいにピョンって飛び降りるんじゃないですか?」

「ここでそういうこと言うなよ!」

正直私も、似たようなことを連想してはいたのだが、さすがに現地で声に出すことは憚はばかられた。しかし、まだ二十歳そこらの山本はそんなのお構いなしに、ニヤつきながら霊への挑発ともとれる言葉を発している。

私が軽く叱ったことによって、何となく気まずい雰囲気になりながらも、これといった異常は確認できずに車へと戻ってきた。

続いては後発の二人が橋の撮影に向かう。

「濱さん、つがね落としの滝みたいに、また変なの出るかもしれないっすね」

「お前が挑発したせいでな!」

こいつの口の悪さはどうにかならないのかと思いながら、フロントガラスの外を眺めていると、急に四十メートルほど先の街灯下に直径一メートルほどの白い発光物体が表れた。

「おい! あれ! 光ったぞ!」

「え!? マジっすか?」

私は発光物体を見つけた瞬間にビデオカメラを引っ掴むと車外へと飛び出した。

走りながらビデオカメラの電源を入れ、すぐに撮影を始める。しかし、車外に飛び出た時には発光物体は跡形もなくなっていた。その間、わずか五秒ほど。

撮影を続けながら現場に近づいていくが、光る原因になるようなものは見当たらない。発光物体は街灯の下に出たのだが、この付近の街灯は全てオレンジで色が違うし、車も来ていなかった。

「山本、お前も見たよな?」

「はい。濱さんに言われて気が付いたんで、見てたのは二秒くらいですけど……」

その後も、レポートしながら動画撮影を続けたのだが、再び発光物体が表れることはなかった。

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