おともだち(宮城県) | コワイハナシ47

おともだち(宮城県)

私の友人、高木の話である。

高木の実家は、宮城県某所でペンションを経営している。

両親ともに都会の人間なのであるが、当地の自然の美しさに惹かれ、移住してきた。高木はそこで生まれ、育った。

ところで、このペンションには、「何かがいる」のだという。

より正しい表現をするならば、客室ではなく「プライベートスペース」、つまり高木の家族が暮らす住居部分に。

こんなことがあって――と高木は話してくれた。

四歳か五歳頃のこと。

両親が仕事で忙しいため、高木は幼いながらも一日のほとんどを独りで過ごしていた。

一家が揃うのは、宿泊客への夕食の提供が終わる二十時頃。

それまで、ひたすらビデオを観て、ゲームをして時間を潰すのだ。

大好きなアニメ映画は、すっかりセリフを覚えてしまうほどに。

陽がとっぷりと暮れている。窓の外は、どこまでも続く黒い森である。

階下からは、美味しそうな匂いが漂ってくる。

お母さんが作る、この宿自慢の御飯だ。

ということは、あと一時間ぐらいは独りぼっちなのだ。

布団にくるまり、ごろごろしながらそんなことを考えている。

この時間が、一番心細い。

お母さんやお父さんの声は聞こえているのに、話すことも顔を見ることもできない。

おまけにお腹も空いてくる。

それに――この家は、何だか時々、とても怖く感じることがあるのだ。

お母さんと、お父さんと、私。それ以外に、誰か。

だから、部屋の扉は必ず開けっ放しにしている。

閉ざされた空間でそれと二人っきりになるのは、とてもじゃないが耐えられない。

ああ、ほら、気配がする。

扉の脇から、こちらの様子を窺っているのはいったい誰?

幼稚園の子よりも、なお小さい。身長は五十センチぐらいだろうか。

廊下は明るくて、こちらは暗いけれど、影と呼ぶには黒過ぎるんじゃないかしら。

クレヨンで塗り潰したみたいに、頭の先から足の先まで真っ黒い。

顔なんて分からない。

目がどこにあるかも分からない。

それなのに。

こちらをじっと見つめているのが分かる。首をちょこんと傾げて。

「入ってきちゃダメなんだからね!」

叫んでみても、反応はない。

ああ、こちらに来たらどうしよう。

お母さんも、お父さんもここにはいない。

大声を出してもきっと、来てはくれない。

廊下の明かりがわずかに射し込む、暗い暗い部屋。

得体の知れない何かと、見つめ合って。

目を逸らしたら、入ってきそうで。

ああ、本当に厭だ。

シェアする

フォローする