朽武者(和歌山県 高野山) | コワイハナシ47

朽武者(和歌山県 高野山)

毎年夏になるとMさんは、お母さんと夜の高野山で奥の院のお参りをした。

はじめてのお参りの時の話。

参道へ行く途中に小川のせせらぎが流れている。

その小川を渡ろうとして、はっと足が止まった。

前に見える森の闇に、三人立っている。

足元すら危うい夜の闇に、その三人だけがはっきり見える。

ひとりは首がない。ひとりは右腕がない。もうひとりは黒い体の中に骨が見えている。

幼いながらも、変な形の人だと思って目をこらした。

そこに、奥の院帰りのお坊さんが通りかかった。

森の闇をじっと見つめるMさんに気づいてお嬢ちゃん、なにか見えるんかと話しかけてきた。

「あそこにな、三人立ってるねん」

お坊さんは顔色をかえるとちょっとお嬢ちゃんこっち来なさい。お母さんもどうぞ、こちらへと、庫裏に通された。

「どんな恰好や。絵に描けるか?」

「うん」とMさんは、見たとおりに三人を描いた。

母が出来上がっていく絵を見ながら、お侍?鎧?武者なの、とつぶやいた。

お坊さんたちの様子を見ていると、私が見たものは本当にそこにいるんだ、と思った。

シェアする

フォローする