寿司提灯(千葉県) | コワイハナシ47

寿司提灯(千葉県)

Nさんが久しぶりに奥さんとドライブに出かけた時の話。

夜、千葉県の国道を走っていると、奥さんがちょっと夜景が見てみたいと言う。

じゃあ、山の上に行ってみるかと、山道に入った。

単調な山へと登る一本道。それが延々続く。

ここ、どこなの?と奥さんが口にした。

走れど走れど一向に景色が変わらない。頂上にもつかない。

そのうち奥さんが空腹を訴えはじめた。

引き返そうとも思ったが、ずっと一本道なので、なんとなく走り続けていた。

そんな時、闇の中にポッと赤い灯あかりが見えた。

提灯だ。

時計を見ると午前二時。

こんな時間に、山の中に灯り?

提灯には回転寿ず司しと書いてある。

店の前に車を停めた。

山の中だよね。二時だよねと、ふたりは顔を見合わせた。

お店には暖簾がかかっていて煌々と灯りが漏れている。

「やってるよ、お店」

「よかった。私、お腹ペコペコ」

「じゃあ入ろうか」

暖簾をくぐって扉を開け、Nさんが一歩踏み入れた。

店内を見た途端に身体が動かなくなった。

「なにしてんの。早く入ってよ」と後ろの奥さんも入ろうと横から店内を覗のぞいて絶句した。

満席だ。

その客が、全員席に座ったまま黙ってうつむいている。

カウンターの中は無人。寿司を握る人がいない。

延々と回っている皿のすべてが空だ。

ふたりとも入口で凍りついた。

帰ろうとNさんのひと言で身体が動いた。

あわてて車に戻った。

Uターンしてもと来た道を下ると、あっという間に下の国道に着いた。

国道に来てようやく安心した奥さんがこんなことを言った。

「さっきのお店!満員だったのに、駐車場に車が一台もなかった」

そういえばそうだった。しかしNさんは、客全員の黙ってうつむく姿が目に焼きついていた。

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