Yさんは昨年大阪市内のあるワンルームマンションに引っ越した。
四階の角部屋でフローリング。陽当たりも良好、交通の便も良い。それで家賃が二万七千円。
しばらくして、同じマンションに住む友人の部屋に遊びにいった。
まったく同じ間取りの角部屋だが、フローリングではなく畳が敷いてある。
なぜこの部屋は畳なんだろう。
友人と話しているうちに、家賃の話題になった。
「ほんと、こんな場所で、こんなにいい部屋で四万円は安いよな」
四万円?
どうして自分の部屋だけが特別に安いのかと考えて、あることに思い当たった。
同じ階の部屋に〝ケイコとマナブのへや〟というネームプレートがあった。
それがすぐ空き部屋になって、若いサラリーマンが越してきた。その次が中年の男性。次は短すぎてわからなかった。次に年配の夫婦が越してきた後、とうとう誰も住まなくなった。
一年も経たないうちに五回も住人が変わっている。
また、エレベーターに〝四階の住人うるさいぞ〟と注意書きが貼られていたこともあった。
自分は別にうるさくした覚えもないし、隣や向かいがうるさいと感じたこともない。
そんな妙なことと家賃が関係しているのだろうと思った。
ある時Yさんは一週間ほど海外旅行にいった。
帰ってくると一階の食べ物屋のおばさんに、ポンとお尻しりを叩たたかれた。
「あんたの部屋、最近可愛い彼女いるやないの」
…………
彼女とは誰のことだ。