高鈴山(茨城県那珂市) | コワイハナシ47

高鈴山(茨城県那珂市)

那珂市に住む床屋さんの話である。

高鈴山という小高い山がある。山頂まで道路で登れるし、

山の道には表側裏側があり、裏からも車で登れるので、床屋さんはよくツーリングに出かけていた。彼はモトクロスバイクに乗っていた。その日は裏側から山を登った。

入り口から三,四キロのところにくると道のはずれに木が立ち並んで、開けた場所がある。

その下はがけになっているのでやや危険な場所だ。

その開けた場所に軽自動車が止まっていた。明らかに、車が入るには不便そうな場所なのに。

(なんでこんなところに停まってるんだろう……)

(もしかして中で人が死んでるのかも?)

興味本位で車の中をのぞいた。誰も乗っていない。

ただ、アルバムが置いてあった。

カギがかかっていなかったので、車のドアを開けた。

やや古そうなアルバムを開けて見た。そこに載っていたのは、一人の女の幼少期から三十歳くらいまでを綴ったような写真だった。

しかし、まわりには誰もいないし、気味が悪くなり、アルバムを閉じた。

そのまま床屋さんは山頂までバイクで登った。この道は、平家の落人の人が家を作っていたようで、石垣が残っている。

裏から登る人はすくないし、薄気味悪い場所でもある。

何週間か経ち、床屋さんの知り合い夫婦の事故死を知った。

夫婦で工芸品をつくるひたちなかの人だった。つるを使っていた工芸品の作家だった。

夫婦が何か月も行方不明だったあと、乗っていた車が発見されたのだ。

その発見場所があのアルバムだけがあった車が放置されていた場所の真下の崖下だったのだ。崖の下は細い川になっていて、おそらくハンドル操作を間違えて落ちたのだろうということになった。遺体も車の中にあったそうだ。

彼らは山奥まで、工芸品の材料のつるを探しにいっていた。

床屋さんはそれを聞いて寒気が走った。

(なんであんな場所でみつかったんだろう)

ちょうど、髪を切っていたお客さんが刑事だったので聞いた。

この不思議な話をすると、

「あそこは自殺の名所なんだよ。そういう場所だから……引っ張られたのかも……」

引っ張られたのは、もちろんあの世にだ。

アルバムを載せた車がないか、その後見に行ったが、もうなかった。

あの車があの世に引っ張っていたとしたら……床屋さんはさらにぞっとした。

この山は、裏道が自殺の名所だった。その昔は、戦国時代の落人だった集落があった。

平家の集落として残っているところは多いが、何も残っておらず、集落のあとがあると言われる伝説の場所は、逃げ延びた後、追っ手や地元の人間に殺されたのかもしれない。

十年前も焼身自殺があり、それが原因で山火事がおきる災害が起きている。

不穏な場所だ。それとも高鈴山という名前から、死者のお弔いの鈴が響く場所だった、ということも考えられる。

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