窓際の女子大生(茨城県つくば市天王台) | コワイハナシ47

窓際の女子大生(茨城県つくば市天王台)

T大学の大学生だった拓哉さんの話だ。

向かいにもアパートがあり、女子大生が住んでいた。

拓哉さんの部屋と同じ高さに彼女の部屋がある。カーテン越しに見える向かいのアパートの窓に映るシルエットを見てはあれこれ妄想するのが楽しみだった。

拓哉さんの車の隣に一台の軽自動車が置いてあり、そこからその彼女が出て、向かいのアパートに入っていくのが見えた。

時には女友達も一緒に帰ってきて、楽しそうな笑い声なんかも聞こえる。

ただ、不思議な事は、駐車場は隣同士なのに一度もそこで会えたことがなかったのだ。彼女が乗っているのは相当古い車で、中も書類や本が散乱していた。

「結構小汚いんだな、この人」

清潔感がありそうな女性と思っていたので、その時はがっかりした。

そのうち拓哉さんの友達が頻繁に泊まりに来るようになり、声も大きくなるのでカーテンを閉めていた。おかげでその間は明かりのつく彼女の部屋は見れなくなった。

夏休みで友達も帰省して泊まりにこなくなった頃、向かいのアパートの窓を見た。

女子大生が窓際に立っていた。しかし後ろ向きなので顔がわからない。髪が長く黒く、白いワンピースを着ている。華奢で品がある後ろ姿だった。

「ああ、今日もいるんだな、良かった」

拓哉さんは胸をなでおろした。いつしか彼女が疑似彼女のようになっており、女友達じゃなく、彼女の部屋に男友達が来はじめたら嫌だなと思うようになった。

次の日、車を出して大学に行こうとして駐車場に降りると彼女の車がなかった。同じ筑波大の学生で、ひょっとしたら構内で偶然会えたらいいなと期待がふくらんでいた。

構内の広い道から外れたところに、なんと彼女の軽自動車が置いてあった。

「やっぱり! 彼女、ここの学生なんだ」

拓哉さんは喜んで、その車の近くにいた。

すると向こうからやってきた三十代くらいのひげ面の男性が、その車を開けて乗っていった。どうやら大学の研究員のようだった。拓哉さんはがっかりした。

「なんだ、彼氏さんがいたんだな……」

その後家に帰り着くと、また向かいの窓を見てみた。

今夜も彼女らしき後ろ姿が見える。見てはまた妄想する。いつかデート……なんて。

そのうち奇妙なことに気付き始めた。

その窓際の彼女の後姿がずっと動かないことに。

気になり、初めてそのアパートのその彼女の部屋の呼び鈴を押した。誰も出ない。ドンドン! とドアを叩いていたら、隣の部屋の扉がガチャリと空いた。大学で見かけた彼氏とおぼしき男性だった。

「あのう、その部屋誰も住んでませんよ」

「え? 嘘でしょう? いつも女の人がここのベランダに立ってるじゃないですか」

「ベランダに?」

「ベランダの窓にです」

その男性は真っ青な顔で答えた。

「そこの部屋、前に住んでた女子大生が亡くなったって聞いてます……僕も怖いけど安いから住んでて……」

その瞬間、彼女の部屋の中から

「ドンドンドン!」

内側から激しく扉を叩く音がした。

「誰かいる! うわああああああ」

拓哉さんと男性はその場から急いで逃げ、階段を降りた。

目の前の駐車場にあの軽自動車があった。そのこともその男性に言った。

「僕は隣の車からあの部屋の女性が出て来るの見たんです。だからてっきり彼女の車だと思って……時々お友達も乗せて降りてくのも見たし、楽しそうに部屋で笑ってるのも見たし……」

「いえ、これは僕の車で、僕以外運転しません」

男性はさらに青い顔になった。

「その女子大生、友達と車で出かけて崖から落ちて死んだって聞いてます」

「そうなんですか……それ、いつの話なんですか?」

「二年前くらいって聞いてます。その子が大学二年の時で……二十歳になったお祝いに友達と部屋で飲んで、酔っぱらって運転して崖から落ちたって話です。生きてるときはすごく明るい人だったみたいで……」

男性と拓哉さんはしばらく話して別れた。その男性は大学の関係者でなく、仕事の関係で大学に営業に来ている人だった。車もその人の持ち物だった。

拓哉さんが見ていたのはその部屋に住んで、車の事故で亡くなった女性の霊に違いなかった。事故に遭った友達も来て、死ぬ前を再現してしまうんだろうか。

それから拓哉さんはすぐに隣町に引っ越した。自分の車も怖くなり売ってしまった。

二度とあんな思いは御免だ。ちょっと高いが今度はワンルームマンションにした。

夏休みが明け、大学の友達がまた新居に遊びに来た。

彼は、髪が長くて白いワンピースを着た女性を連れていた。

「や、やあ久しぶりだな……そちらは……」

「拓哉! 久しぶり! 引越し祝い持ってきたよ。前よりいい部屋じゃん」

相変わらず友達は元気にやってきた。

うしろに立っている女性が気になり、拓哉さんは聞いた。

「……その後ろの人は彼女?」

「何言ってんだ、俺一人だよ! はいこれ! 一緒に飲もう」

「お前……今日車に乗ってきた?」

「お? わかる? 中古だけどすっげー安くてさ、三万だぜ」

「それ、多分事故車だと思う……」

「そりゃ安いしそうだろうな、だけどそんなの気にしてらんねえよ、貧乏学生はさ。明日ドライブでも行かねえ? お前、車売っちゃったんだもんなあ。乗せてやるよ」

笑顔でワインのボトルと車のキーを見せる友達。

「入るぜ~」

後ろの長い髪の女性の口元がキュッと上がり、ニカっと笑った。

女子大生は誰に憑いていたのか、わかった。

「帰ってくれ!」

拓哉さんは大声で叫んで、友達を追い返した。

それ以来、家に誰も呼ばないようにした。

それでも玄関のドアを開けると、すっと白い服の人が通りすぎる錯覚があるそうだ。一瞬見えて、見回すと誰もいないという現象が。

家を移っても、ごくたまに起こるそうだが。錯覚なのだろうか。

それとも……。

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