雪行灯(北海道) | コワイハナシ47

雪行灯(北海道)

あるタクシーの運転手が父親から聞いたという話。

出身地の北海道に渚滑(しょこつ)という所がある。昔から瘦せた土地で水源も遠く、農耕には適さなかったという。

終戦後しばらくして、死んだものと諦めていた三人の息子が、全員無事で帰ってきた。

これでまた土地を開いて、どんどん畑を耕すことができると父親はとても喜んだ。

ところが土地を広げても農耕に必要な水源が近くにない。川までは遠かった。

そこで三人は井戸を掘ることにした。井戸ができれば自分たちだけではなく、村の人たちも大いに助かる。そう言って一日の農作業を終えた後、夜遅くまで井戸を掘った。

「ここは涸かれた土地だ。今まで何人も掘ったけれどダメだった。無理はするな」と父親は止めた。

雪が降れば春まで作業はできない。三人は毎日掘った。

しかし出るのは石ばかりであせっていた。

息も白くなりはじめたある日、とうとう水が湧いた。

三人は喜び、末の弟が「親父に知らせて来る」と地上に出ようとしていた時に、あろうことか落石にあたって死んでしまった。

「息子の命と引き換えにゃ井戸は掘れなんだのか。こんなことなら井戸なんぞいらん。せっかく生きて帰って来てくれたのに」と、父親は嘆き悲しんだ。

お通夜のこと。

夕方から初雪が降った。

どんどん積もる暗闇の中を、次々と提灯をもった村の人たちが弔問に訪れた。

井戸を掘ってくれた村の恩人と思ってくれたのである。

夜も更けた。弔問客を見送りに外に出た家の者が、はてと気づいた。

初雪とはいえずいぶん深い。

そういえばこの雪の中、よくみんな家までの細い道を通れたな、と不思議に思った。

「雪の中、よく道をはずさず来れましたね」と聞いてみた。

「そういえば来る途中、雪で道が見えないと思っていたら、ポッと青白い光が行く手を照らしてくれたので、あそこが道かと行くと、またその先をポッと照らす。ああ、あそこだと。そうやって光をたどってきたおかげでお宅に着いたんです」

「そういえば考えてみると、まるで案内されたようでした」と皆口々に首をひねった。

「死んでまでお前は、義理を果たすか」と父親はまた泣いたという。

その井戸は今もあるが、過疎が進むにつれ水も涸れてしまったのだという。

シェアする

フォローする