神隠しの白装束(茨城県常陸太田市) | コワイハナシ47

神隠しの白装束(茨城県常陸太田市)

母が十歳の頃。近所に住む五歳の女の子が姿を消した。大人達が総出で捜したが見つからない。夜になり大人でも入るのが難しい山奥でやっと見つかった。女の子の話によると、綺麗な着物姿の女に連れて行かれたという。皆は狐の仕業だと噂した。ほんの数十年前の日本にはこんな話が確かにあった。~月浦影の介~

小学校低学年の頃の友田さんの話だ。

仲間を連れて朽ちた鳥居のある山で遊びまわるのが好きだったという。

一人、とても怖がりの子がいた。そして妙なことを言ってきた。

「もし神隠しに合ったら、すぐにその場から逃げ出した方がいい。結界というのがあって、そこに入り込んだら奥にしか進めない。とにかくその場から遠くにいくことだ」

「結界ってなんだ?」

「この世とあの世の間になる線だ」

「神隠しなんて昔の話だろ、いまどきねえよ」

「神隠しは幽霊だ。連れてく幽霊だよ」

「幽霊ならよけい見てみたい」

「勝手にしたらいい、俺はいかねえからな」

怖がりを抜いた、同級生の五人で行くことになった。

古ぼけた鳥居をくぐると落ち葉が埋もれたこんもりした場所があった。そこに像がある。顔が半分割れていたが、狐? 狛犬? 何かの動物がお座りしているようだった。顔が三分の二くらい割れて無い。

「狛犬だったら、向かいにねえのはおかしいよな」

仲間の後藤がぽつりと言った。後藤は体格が良く、一番背が高かったし度胸があった。友田さんはリーダーだったが副リーダーは後藤さんとしていた。

しばらく道のない藪と木々の間を歩きつづけた。傾斜があるのでなかなか進めない。後藤ともう一人の友達が先に行った。(このもう一人の友だちの名前が友田さんには全く思い出せないそうだ)

その時だった。友田さんの前に白装束をした人間が立ちはだかった。

(だ、誰だ)

声がなぜか出ない。その男は立ちはだかり手を広げ、前に行かせないのだ。

体も動かない。これがまさか幽霊か……はっきりと見える。

神隠しにあったら逃げろ、とにかく動け、怖がりが言ってた言葉を思い出したら体が動いた。友田さんは、今まで来た道を杉勢いで戻った。

仲間たちが後ろから上がってきていたが、一心不乱で降りてくるリーダーを見て慌てふためいた。

「うあ、何だ、出たんか!?」

子どもは誰かが走り出すとそれについていく。

リーダーが逃げるならみんな逃げる。

手を広げた白装束のひげの男が背中に憑いて追ってくる!

友田さんはいつまでも追いかけられている気がしていた。

その感覚が全く取れず、家まで走り帰った後は、高熱が三日間続いた。

寝てるときも目をさますと自分の体の上にその男がじっと立っていて、友田さんを見ている。その間ずっと金縛りになるのだ。

「憑りつかれてしまった……」

ところがそれだけでは済まなかった。

後藤さんと、もう一人の友達が行方不明になっていたのだ。あの時一緒に逃げたと思ったが、二人は友田さんの先を行っていたから、友田さんの逃げる姿が見えなかったのだろう。

それでもあんなに悲鳴を上げて逃げればわかるはずだろうが……

その先に見えた二人の背中が思い出される。一緒に逃げてくれたと思ってたらついてこなかった……母親にこの話をすると、意外な答えが戻ってきた。

「その白装束の男が、お前を守ったんだよ。奥に入らせないように」

一週間ほどして行方不明だった後藤ともう一人の友だちが遺体で見つかった。

交通事故死という扱いだった。国道で二人倒れているのが見つかった。

見つかった時にはまだ息があった後藤が、病院で少し事情が聞けたそうだ。

彼の話はこうだった。

「しばらくよくわからない世界を歩いていたが、気づくと寝ていた。体が動かず、ようやく動けるようになったら友だちが先に走り出したので付いて行った。

閃光が見えて、誰か光る人が立っていた。その人が呼ぶので、その方向に抜け出せる道があると思っていた。そこに出ないともう日常に戻れないと思った……そうしたら体に衝撃が走り気づいたら倒れていた」と。

つまり、後藤たちが行方不明になって二日目にその神隠しから拘束が解けたとたんに、走り出したのだろうと。その先に国道が走っていて、急に飛び出した二人が車に轢かれたのだろう。

今思い出しても、あの白装束の男が自分の守護霊で、守ってくれたんだと友田さんは語る。

その後、小学生のままの後藤さんが時々見えるのだという。

行くなと手を広げるのでなく、

「こっち来い、早く……来い……」

後藤さんは光の向こうに立っていて、うすら笑いをして手招きするのだという。結界を超えさせようと……。

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