多良崎城跡(茨城県ひたちなか市足崎) | コワイハナシ47

多良崎城跡(茨城県ひたちなか市足崎)

山田さんは城マニアで、特に城跡を調べるのが好きだった。日本中あちこち行くのには愛車の250ccバイクが欠かせない。今回はこの城跡にいくことにした。

辺りに夕闇が迫り始める十六時位の頃だった。国道245号線から奥に行くと「勝田ゴルフ倶楽部」があり、そこを右折したところに駐車場があった。そこで徒歩にするか考えたが、もうあたりは暗くなっていたし、ちょっと雰囲気も怖くなっていたので、その先まで行くことにした。

ただ、走りながら気になったのは、常にガードレールがボコボコになっていて、どう考えても事故多発地帯だなと感じていた。

しばらく進むと城跡の石碑があった。そこでデジタルカメラで自撮りと普通の写真を撮り、バイクを路駐した。そこから城跡に向かう林道へと入っていった。霧がたちこめているような日だった。

林の中で写真を撮っていると、急激に寒気がしてきた。林の中に誰かいるのだろうか、山田さんが歩くと同時にガサガサっと足音がする。変質者や浮浪者だと気味が悪いと思って、急いで林道を戻っていた時だった。木立の中、自分と同じ速度で歩く音が聞こえていた。絶対誰かがついてきている。ふと右後ろに視線を感じて林を見るが誰もいない。怖くなって

「誰かいますか?」

と声を上げてみた。もちろん返す声はなかった。その日は山田さんは誰ともすれ違なかったからいる訳がない。念のため写真を撮って路駐したバイクに乗って帰った。キイイイイという自転車のブレーキ音みたいなのが響いたが、どにかく誰もいない。更に怖くなってバイクのエンジンをかけ、ヘルメットを被った。その時耳元で確かに聞こえたのが

「行くの?」

という女性の声だった。うわああ! と声を上げてそこから急発進して出た。バイクの後ろにズンと重みがあった。

(まさか後ろに乗ってないよな……)

気配を感じたが、とにかくスピードで振り払おうとして進んでいたら、一瞬で目の前にガードレールが迫り、ギリギリで回避できた。そこはカーブでも何でもなくただ山田さんがガードレールに発進していたのだった。

後で写真を現像したら、数枚足りなかった。写真屋のおじさんに言うと

「見ない方がいいよ。心霊スポットとか言ったのかな? それとも旧跡とか?」

「多良崎城跡です……」

「おじさんはそういう場所の言われはよく知らないけど、こういうの写るときはバイクも運転に気を付けないとってことだからね」

と渋々渡してくれた写真を見た。

山田さんの自撮り写真だった。すぐあの写真だと気づくのに時間がかかった。

理由は、山田さんの首から下しか写ってなかったからだ。

そして、肩に薄く手がかかっていた。数人の手だった。

「ひいっ」

山田さんはゾッとして写真を投げ捨てた。おじさんはそれを拾うと言った。

「こういう写真よくあんだよね。すぐお祓いしてもらいな。知り合いでそれやんなかった奴がいて、大変なことになったしな」

「ど、どんなことになったんです?」

おじさんはうすら笑いして言った。

「二人は死亡事故、そして他の五人は自殺だったかな。崖から飛び降りたよね」

山田さんはすぐに写真を持ってお祓いに行った。やはりあの場所で自殺した霊が山田さんに憑いていたそうだ。不倫の彼との別れ話を苦に自殺した女性だったようだ。

ここは不思議な看板が出ており、バイク走行を禁止している。何でもないところで事故が多いからだとも聞く。また帰ってこなかった行方不明者も多数いるそうだ。

僕はこの話を聞いたあと、別の方からもこの城の怖い話を聞いた。ひたちなかの整術の先生、霊感のある飛田先生の経験談だ。

「そういうバイクの人の話はあるんですけどね。二人乗りバイクが事故で、後ろに乗っていた女の子が振り落とされて、そのままお亡くなりになったんですよ。だけど僕はそうじゃないですね、そういう少女の霊は見えません」

「となると、他の霊魂がいるのでしょうか?」

「城跡の場所も霊が溜まっていますが怖くはありません城跡の北側に田んぼがあり、そちらから怖い者が見えます」

「それはどんな人ですか?」

「多分、姫様です。戦国時代のころかな。田んぼのほうが引き込まれるようで怖いですよ。で、城跡には武家・旧日本軍の軍服を着た人を中心とした霊が多いようです……」

この水田は、真崎浦という沼地だった場所で、城の堀の役割だったようで自然の要塞となっていた。

多賀崎城は、常陸大掾氏一族の吉田里幹の後裔が築城したとされているが、南北朝の騒乱で、南朝方についた常陸大掾氏一族は没落してしまい、その後には北朝方についた那珂氏系の足立氏が多良崎郷の地頭となった。

騒乱の場所であり、無念の姫君がこの元沼地に立つのは、支配者がことごとく入れ替わった当時の動乱を伝えにきているかのようだ。

この場所でケガをするのは、その怨霊があの世へ連れて行くともいわれている。

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