青森乃暖(青森県) | コワイハナシ47

青森乃暖(青森県)

戦後、勘蔵さん一家が満州から帰国してからの話である。

親戚を頼って得た小さな部屋で、家族五人は身を寄せ合って暮らした。

最低限の日々の糧にも困る生活だった。

「さ、さんびぃ寒いな」

秋が訪れると、勘蔵さんは隙間風に震えた。

暖を取れる類のものは全て家族に与えている。

これから冬が来ると思うと、これは流石に大黒柱の死活問題である。

だが、幸いなことに、

「布団いらねがー。布団いらねがー」

勘蔵さんは道すがらに行商人に出会った。

「待ってけろ!布団!」

「あら、あんた、布団!」妻が驚きの声を上げる。

「んだ。布団だ」

「良かったわね!でも、どやして買ったの?」

「中国から持ってきた、あの乾物あったべ。あれど交換だ」

「乾物と。持つべきものは乾物だじゃね」

「んだ。持つべきものは乾物だじゃ」

という訳で、勘蔵さんは晴れて布団にくるまって寝ることができた。

のだが。

重ぐねがー。重ぐねがー。

毎晩、布団からそんな声が響く。

「さしねえ!」

叫んで起きると当然家族が心配する流れだ。

「あんた……また布団が喋ったのが……」

「んだ、また布団だ……」

折角手に入れたというのに、

重ぐねがー。

が、うるさくて眠れない。

ただの布団が重たい訳ないだろうに。

化け物め。

そしてその夜、遂に勘蔵さんの堪忍袋に限界が来た。

重ぐねがー。重ぐねがー。重ぐ。

「さしねえ!いっつもいっつも何よ!」

勘蔵さんは親の仇と言わんばかりに、布団を力任せに破った。

「さしねえ!さしねえ!さしねえ!」

生地から綿が飛び出る。

そして、ゴトン、と一つの骨が落ちる。

続いて、モサッ、と一束の髪の毛が落ちる。

「これが!これのせいが!」

骨と髪、千切れた布団の欠片を手に勘蔵さんは外に飛び出した。

「ざまあみろ!」

マッチでそれらに火が灯される。

「化け物が……あったけえや」

軒先で布団の焚き火に当たる勘蔵さんの満足げな顔を、家族はただ眺めるばかりだった。

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