深夜の来客(福島県) | コワイハナシ47

深夜の来客(福島県)

昨夜、うちに幽霊が出たよ。

ある日の菅井夫妻の会話は、奥さんのこんな一言から始まった。

夜中にトイレに起きた奥さんは、思わぬものと遭遇した。

隣の子供部屋から、扉も開けずにぬうっと男が現れたのだ。

開襟シャツにスラックス姿。

頭の先から何も履いていないその足先まで、全身がずぶ濡れである。

真剣な面持ちで前だけをじっと見つめて廊下を横切り、そのまますっと消えた。

あれだけ濡れていたのに、廊下には一滴の雫も残らなかった。

奥さんはその間、目が合いませんようにと願うばかりであった。

話を聞いた御主人の顔色が変わった。

――それ、借金の頼みを断った、経営者仲間の青山かもしれない。

先日来、青山氏とは音信不通になっていた。

それどころか、仲間内の噂では行方不明になっているとのことだった。

数日後。御主人の予感は的中した。

隣町にある沼で、入水自殺した青山氏が発見されたのだ。

「そういえば、子供部屋って北向きなんです。そのまままっすぐ北に向かうと、丁度その沼に行き当たりますね」

家族に悪いことが起きなければ良いけれど、と思っていましたが、幸い何もありませんでした。うちに化けて出やがってと主人は言ったけれど、あの顔は悪意を持ったものではなく、何か詫びるような、挨拶に来たような、そんなように思えました――。

奥さんはそう言って、話を締めくくった。

福島県内にある沼に纏わる話である。

シェアする

フォローする