トンネルの男(宮城県仙台市) | コワイハナシ47

トンネルの男(宮城県仙台市)

仙台市在住の竹山さんは、商用や帰省の折に常磐道を使用する。

その経路上、茨城と福島の県境に近いトンネルがどうにも気味悪いのだという。

深夜、仙台への帰り道。独りきりのドライブであった。

通行量は少ない。自車のライトだけがアスファルトを照らし出す。

闇の先に口を開けた光の穴に、時速百キロで飛び込んだ。

視界がオレンジ一色に染まる。車内がふんわりと明るくなる。

壁に埋め込まれたナトリウムランプが、鎖のように連なって飛んでいく。

と、その先の、煌々と照らし出されたトンネルの一角に何か黒いものが立っている。

車はそれに向かってぐんぐん近付いていく。

男だ、と思った。右側車線の路肩に、男が立っている。

まだこの位置からでは、着ているものも顔もぼんやりとしか見えない。

しかし、こんな深夜である。おまけにここは高速道路だ。

つまり、あれはまともに見てはいけないものだ。竹山さんは咄嗟にそう思った。

男の脇を走り抜けるほんの一瞬。

窓の向こうで、男がこちらを向いたような気がした。

ともあれ、早くこのトンネルを抜けてしまいたい。

三百メートルほどの短いトンネルが、妙に長く感じられる。

ふと後ろが気になった竹山さんはルームミラーを覗いて、絶句した。

そこには、二つの目が、大きく映し出されていた。

じっと前を見つめるかのような目。自分のものでは決してあるまい。

自分の目の動きとミラーのそれが一致していない。

そもそも、目だけが映ることなどあり得ない。

ミラーのすぐ前に顔があれば話は別だが。

トンネルを抜けると、車内に闇が戻った。

それに紛れるように、ふっと目も消えた。

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