うずくまるもの(兵庫県神戸市) | コワイハナシ47

うずくまるもの(兵庫県神戸市)

ある晴れた陽射しの強い真夏の話である。

Mさんが神戸市の山側へ向かって歩いていた。

坂道を歩いていると、いつの間にか人通りが絶えていた。

ふと前を見ると、電柱の下に着物姿の女性が背をまるめるようにしてうずくまっている。

どうしたんやろ。

近づきかけて、妙なことに気がついた。

今どき見かけないというより、外出するためのものとは思えない、シミのあるうす汚れた着物に、なんとなく時代がかった柄。丸く結びかためた頭髪。

とはいえ苦しそうなのを放ってもおけず、その女性に近づいて肩に手をかけようとした時だった。

その女性には影がない。

地面には自分の手とその影があるのに目の前の女性の足元には影がない。

間違いない。自分にも電柱にもくっきりと影がある。

その上この女性は、同じ陽射しの中なのに暗く沈んで見える。

なんだこれ?

思い出した。

以前読んだ『新耳袋』にある〝うずくまるもの〟の話(第二夜第七十九話)。

まるっきり本と同じだ。確かあれも神戸の話。

「えっ、この場所なんか?」とMさんはあたりを見回した。

途端にゾッとして、引き返した。

振り返ると遠くなった電柱の下に、陽射しの強さよりも薄暗い女性が、まだうずくまっていた。

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