夏の跡(兵庫県) | コワイハナシ47

夏の跡(兵庫県)

兵庫県にある武庫川での話。

夏、雨が少ない時期、この川は天井川になる。

砂地が多いため伏流水となるので、川が干上がるのだ。

水は泥のたまる淵に集中して、川中の魚もそこに集まるので、夏休みともなると大人も子供も朝から魚捕りで大騒ぎになる。手づかみで魚が捕れるから、あちこちで大歓声が上がる。

ある年のお盆のこと。

Hさんは子供たちと一緒に網やバケツを持って魚捕りを楽しんでいた。

午後三時頃に雲が出はじめて、いきなりものすごい夕立が来た。

あわてて国道二号線の橋の下に逃げ込んだ。

雨雲は四十分ほどで通り過ぎ、あとには噓のような青空が広がった。

さぁ続きだとばかりに淵に走っていくと、さっきまで干上がってひび割れだらけだった川底が、夕立でドロドロになっている。

Hさんの長男が、あれ何?と泥の上にできたばかりの足跡を指した。

何って、犬か何かの足跡だよ……と言おうとしてはっとした。

四本の足で歩いてはいるが、動物の足跡ではない。

人だ。

大きさからいって大人のものだ。

足跡は池のような淵から丘のような中なか洲すにまで続いている。

何だ、これは?水に入ったとも中洲に行ったとも見えるが、雨宿りの時には誰も河原にいなかった。それに河原は隠れる所もほとんどない。

何がこの跡をつけたんだ?

自分の手足をこの跡に重ねようとして、妙なことに気がついた。

右手にあたる足跡は前を向き、左手にあたる足跡は後を向いている。後足の跡も左右のつま先が逆向きだ。

こんな跡はありえない。

Hさんが首をひねっているうちに、他の人たちもやって来て、みるみるうちに踏み消されてしまった。

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