片目の男の子(大阪府) | コワイハナシ47

片目の男の子(大阪府)

十年ほど前の夏のこと。

Mさんたちは友だち六人で、海水浴をしようと大阪から夜の道を日本海へ向かっていた。

車は三人ずつ二台に分乗し、Mさんは先頭車の助手席。

運転していたのは、のちにMさんのご主人になる彼。後ろの席には女友だちが座っていた。

近道のため京都市郊外のある峠道を通った。

Mさんが窓にもたれて寝ていると、左横からぐいっ、ぐいっと髪の毛を引っ張られた。

「何すんのよ!」

彼も友だちもその声にびっくりしている。

ふたりの表情で、おかしい、と一瞬で気がついた。引っ張られたのは彼側の右でもなく、後ろの友だち側でもない。間違いなく左のドア側から引っ張られた。

しかし、左側は外だし、車は走っている。

だからと言って夢ではない。自分の頭に痛みがまだ残っている。

冷房をかけているので、窓ガラスはピッタリ閉じている。

とは言え、確かに外から……。

車がトンネルに入った。

その瞬間、ぎょっとした。夜中のトンネルの中に人が見えた。

中学生くらいの男の子が、壁際に立っている。

色白のものすごく細い男の子だ。

茶髪、Tシャツに短パン、そしてビーチサンダル。うつむきかげんで左目を手で押さえている。

その子の脇を通り過ぎる時に、Mさんと目が合った。

一重瞼の子だ。そこまでわかる。

「見た?あの子、こんなトンネルの中にいるの、おかしない?」

「ほんまやな、事故でもおうたんかな」と彼。

「警察か救急車に電話してあげたら?目、押さえてたやん。怪我してるんちゃうの?」と、後ろの友だちも心配そうに言う。

「ああよかった。私だけ見えてたんか思うて、びっくりしたわ」

幽霊でも見たのかと思ったMさんは、胸をなでおろしたものの、現実の人とわかれば今度はその少年のことが気になった。

こんな山の中には公衆電話がない。とりあえず後続の友人たちに相談しようと、トンネルを抜けたあたりで車を停めた。

一分もしないうちに友人たちの車が来た。

「どうしたんや」

「さっきトンネルの中に男の子おったやんか。怪我してたようなんで、救急車呼んだろか思ってな」

何だって?という顔をされた。

「男の子?どこに?」

話が合わない。

しかし先行したMさんたちは全員確かに見た。

だが後続車の三人が言う。

「こんな山の中で、真夜中のトンネルに、男の子がひとりでどうやって来るんや?」

もしかしたら事故車がこの道の先にあるかもしれない。

二台は再び走り出したが、何も見つからぬまま目的地に着いた。

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