白い川(山梨県) | コワイハナシ47

白い川(山梨県)

八月中旬、Sさんは友人グループと富士山近くの某所にキャンプに行った。

夜、Sさんは彼女とふたりきりの時間を作って、湖畔へ散歩に行くことにした。

湖は意外に離れていたので、ずいぶん歩いた。

やっと湖畔に着くと、ベンチを見つけてひと休みしながらとりとめのない会話に興じていた。

話の最中に突然、彼女の目が大きく見開いた。

両手を口に当てて大きく息を吸い込んでいく。

どうした?

目が自分の背後を見ていることに気がついた。

振り返ると、真っ白い着物姿の人が、うつむいて立っている。

頭に白く小さな三角の布をつけている。

考えるより先に彼女の手を取って走っていた。

湖畔から離れると少し落ち着いた。

あんなのがいつ来たんだ?と彼女に聞くと、来たのではなく、闇の中から彼の横にいきなり現れたのだという。

みんなのいるところへ早く戻ろう、と急いだ。

前方の森の間から、白い光が漏れている。

道路だ!車が走ってる。あそこなら人もいる。そう思うとやっと安心した。

ふたりは光を目指してさらに急いだ。

森を抜けて道路に出ると、思わずその足が止まった。

暗い中に白い川が現れた。

川に見えたものは白装束の人たちで埋め尽くされた道だった。

東京の方から富士山の方へ、何千何万の白い人々が続いている。

男性、子供、老人、赤ちゃんを抱いた女性。立っている人、しゃがむ人をのみ込んで、ゆっくり、ゆっくり歩いている。

それはまさしく白い川の流れだった。

彼女は足がすくんで、その場にへたりこんでしまった。

Sさんは、彼女を無事に帰したい一心で、何とかみんなのいるキャンプ場へ帰ることができた。

この道は道志峠に続いている。

シェアする

フォローする