握り拳(千葉県船橋市) | コワイハナシ47

握り拳(千葉県船橋市)

Aさんが船橋にある友人宅に招かれた。

親しい女性三人で、久しぶりに長々と話し込んだ。

「私、もうすぐ引っ越そうと思ってるんだけど、誰かここに代わりに住んでくんないかなあ。すごく安いから」とBさんが言う。

「えっ、引っ越してまだ一年じゃない?それに広くていい家じゃないの。安いのなら住んでもいいわね」とCさんが言った。

「でも言っとくけど、ここ、変よ」とBさんは意味あり気な顔をした。

「何?何があるの?」

「信じてくれないだろうけど、二階のね、階段上がった突き当たりにね、出るの」

出るって?

二人は耳を傾けた。

それは、引っ越してそれほど間もない朝のことだった。

洗濯物を干そうと階段を上がって、二階の踊り場の一歩前まで来た時、目の前に階段の幅いっぱいもある握り拳が、落ちてきた。

踊り場の床にどすんと当たると、それは天井へ引き戻されるようにして消えた。

ひと抱えもある巨大な男の手だった。

はあー?

二人でゲラゲラと笑った。

するとBさんはいたって真剣に「それが落ちてきたのって、二度や三度じゃないの。何回も何回も見てるのよ。私だけじゃなくって、主人も子供もみんな見てるの。だから階段を上がるのが怖くって、二階が使いにくいの」

拳は人をぶつ、というより〝おどかしている〟みたいで、目の前や通り過ぎたすぐ後に落ちてくるのだという。

Bさんは、このあとすぐに引っ越した。

その後にはCさんが〝安いのなら住んでもいいわ〟とこの家に引っ越してきた。

Aさん、Bさんの二人は早速その家へと遊びに行き、「出た?」と聞いてみた。

「出た」

本当だったとCさんは驚いている。

「それも、二度や三度じゃないの……」と同じセリフを当然のように使う。

ねっ、本当でしょ、と元住人のBさんが満足気に笑った。

Cさんもすぐにその家から引っ越した。

その後すぐにその家は取り壊され、現在は新しい家が建っている。

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