ぶつかる(熊本市) | コワイハナシ47

ぶつかる(熊本市)

この話も綾香さんが熊本市の某駐屯地に勤めていた頃の話である。

その駐屯地では新館と旧館があり、まだ入隊して間もない綾香さんは旧館に入っていた。旧館の一階、一番奥の部屋は開かずの間になっており、一応物置きとして使われてはいるのだが、ほとんど物も入っておらず、普段は使用禁止の札が張られている。

なぜ、その部屋が使用禁止になっているのか先輩に聞いてみると、「新人をその部屋に入れると必ず数人がやめるから」だそうだ。

さらに駐屯地内で、綾香さんに不可思議なものが見えているという話は広まっていたため、先輩からこんな忠告も受けていたのだという。

「あの部屋から体操服姿の人が出てきて、道を聞かれたりしても答えちゃいけないよ」

(んなわけあるかよ)

そうは思っていたものの、その部屋からは確かに気味の悪いものを感じていたため、なるべく近寄らないようにしていたのだという。

そんな中、年に一度の大掃除で、綾香さんは初めて開かずの間に仲間と三人で入ることになった。

普段は締め切られているせいか、中はカビ臭く、陰鬱な空気が漂っていた。

(この部屋、下手な心霊スポットより雰囲気やばいやん!)

雰囲気に圧倒されながらも、綾香さん達は部屋の掃除を淡々と進めていたのだが、急に誰かから肩をたたかれて振り向くと、そこには体操服姿で生気のない女が立っていた。

「あの〜、○×▽はどこですか?」

体が固まってしまい動かない。一緒に掃除をしていた仲間達も、体操服の女を見て凍り付いている。

「あの〜、○×▽はどこですか?」

女は繰り返し道を聞いてくるのだが、どこへ行きたいのかは、はっきり聞き取ることができない。

「知りません!」

体を震わせながら精いっぱいの声で叫ぶと、女は踵を返して部屋の外に向かって歩き出した。三人は体が硬直したまま、ゆっくりと歩いて行く女を目で追っている。

女はそのまま部屋の入口まで行くと、スゥーっと消えてしまった。

「キャー!」

三人は叫びながら部屋を飛び出し、上司に今起こったことを報告したそうだ。

「ほんとに見たんか? あの部屋では、昔新入りの隊員が自殺したことがあってね……このことは誰にも言わんでほしい」

またもや口止めを食らった綾香さんは、今まで以上にこの部屋を避けて生活するようになったという。

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