千里眼(東京都) | コワイハナシ47

千里眼(東京都)

体験談を応募してくださった方と友情を結ぶことがある。東京都在住の画家、幹也さんもその一人で、応募以前から面識があったことも手伝って、数年来、交友している。

今年の四月三〇日のこと、幹也さんからスマホにメッセージが送られてきた。アメリカにいるうちの息子の安否を気遣う問いかけだったので、心配ないと答え、そこから会話が始まった。お互いの近況を報告し合っていたところ、彼が岐阜県に家を一軒買ったので近々転居するつもりだと言ったから、私は「いいですね」と羨ましがった。

すると、幹也さんは「いいのかな。その家の周りには田圃しかないし僕は料理が作れないから餓死するかもしれません」と言うと、間を空けずにこう続けた。

「そうだ。本棚の裏にある死体の写真を手放すことを考えませんか?」

──私は唖然としてしまった。話題の切り替えが急だったせいもあるが、それよりも家族すら知らない私の秘密を、正確に言い当てられたからだ。

「なんですか、それ?」と私はとぼけた。彼は容赦してくれなかった。

「川奈さん、持ってますよね」──疑問符も付けない、確信に満ちた指摘である。

しょうがない。私は開き直ることにした。

「ええ。私なら、本棚と壁の隙間に釣崎清隆さんから頂戴した死体の生写真を隠してますけどね!家族が嫌がりそうだから。でも、なんで知ってるんですか?怖いな!」

「その本棚は窓際に置いてありますね。窓から隣の二階建ての家の屋根が見えますよね」

これもその通りだった。幹也さんは我が家を訪ねたことはなく、うちの室内の写真を私や家人が公開はおろか撮ったことすら一度もないというのに。

幹也さんに霊感があることは取材を通じて知っていた。何度も怪異を体験する人には強弱の違いはあれど霊感が備わっているものだとも思う。

しかし千里眼もお持ちだったとは!「凄いとしか言いようがない」と私は嘆息した。

そうしたところ、「そこに置いておくのは良くないと感じたことはありませんか」と彼は不気味なことを言いだした。

──死体写真と結びつけて考えたことはないけれど、黄昏から深夜にかけて、その部屋からは人が歩きまわる足音や衣擦れ、関節を鳴らす音が聞こえてくるのだが。

「その写真から怨念を感じます」

確かに、それは事故死した女性の手首から千切れた美しい片手が血溜まりに浸った景色を写したもので、彼女は失った片手と命を惜しんでいるに違いないのだが……。

見たこともないのになぜわかる?と、思った途端「視えてますよ」と彼が応えた。

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