○月怖い(熊本市) | コワイハナシ47

○月怖い(熊本市)

それがいつから始まったのかはっきりと覚えていないそうだが、綾香さんは熊本の駐屯地で働いていた頃、同じ夢をよく見ていたそうだ。

自分が真っ暗闇の中にポツンと立ち尽くしていて、目の前にはスーツを着たサラリーマン風の男性が一人、こちらを向いて立っている。口元をもごもごと動かしているのだが、最初は何を言っているのかわからなかった。

しかし、その夢を繰り返し見るうちに、段々と声が聞き取れるようになってきた。

「○月怖い。○月怖い。」

○部分は聞き取れないのだが、○月がつ怖いと言っているのはわかる。

元々不思議な体験をすることが多かった綾香さんは、この夢にも何か意味があるのではないかと考え、ネット上で自分の夢について調べ始めた。

「スーツ姿 見知らぬ男性 怖い」

検索をかけるものの、有益な情報は出てこない。

このまま自分の中で抱え込んでいるのも怖い気がしたので、仲の良い友達には、その夢のことをできるだけ話すようにして、不安を和らげていたのだという。

その後も同じ夢を見続けていたのだが、少しずつ男の話す内容は変わってきていた。

「○月怖い。来る。来るぞ」

一体なにが来るのだろうか?

言いようのない不安を抱えつつも、その男の言葉を日々ノートに書き綴つづっていたのだが、ある日、男の発する言葉が全てわかったのだという。

その日も、男はいつもと同じスーツ姿で、暗闇の中から語り掛けてくる。

「四月怖い。怖い。もう来る。揺れる。来るぞ。怖い。四月怖い」

目が覚めると、体中がびっしょりと汗ばんでいるのが分かった、その日は二〇一六年四月十三日だった。

翌日、二〇一六年四月十四日二十一時二十六分、最大震度七を記録した熊本地震が発生した。

それ以来、あのスーツ姿の男が夢に出てくることはないそうだ。

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