変なものが棲む界隈(京都府) | コワイハナシ47

変なものが棲む界隈(京都府)

大江山の麓に住む雅紀さんは、たまに近所で変なものを視てしまうのだという。

たとえば──彼は朝の五時頃に犬の散歩に出掛けるのだが、今年の三月、散歩の途中で、路駐されている赤いハッチバックのセダンの後部座席から七歳ぐらいの子どもが車の外に身体を乗り出していることに気づいた。最初は「危ないな」と思っただけだった。車で待たされている子どもが退屈して窓から出ようとしているのだろうと推測したのだ。

ところが近づいていってみると、子どもは車のドアから擦り抜けていた。そしてまた、前のドアを擦り抜けて助手席に納まった──驚いて車に駆け寄ると消えてしまったのだが。

また、向かいのマンションの一階にいる奇妙なものを目撃したこともある。

彼の部屋からはそのお宅のベランダが丸見えで、先方にもそれがわかるようで、そのベランダにあるドアは今まで一度も開いていたことがなかった。

そのドアが、ある朝、開いていた。

ドアの内側に何かいるので目を凝らしたところ、三歳児ぐらいの大きさの奇妙なものが外を向いて、お遊戯の「糸巻き巻き、糸巻き巻き」のような仕草をしていた。

人間ではない。顔が焦げ茶色で異様に小さく、目や口が綴じられており、いつか博物館で見た首狩り族の干し首にそっくりだ。動いていなければミイラだと思うだろう。

ゾッとしたそのとき、飼い犬が足もとに擦り寄ってきたので視線を外した。そして、もう一度見直すと、何事も無かったかのようにドアが閉じていた。

つい最近も、午前三時半頃、自転車で桂川に架かった橋を渡っていたときに、怖いものを視てしまった。彼は午後一〇時から午前三時まで、ある会社の防音室を貸してもらえることになっていて、週三回、通っている。その行き帰りに桂川を渡るわけだ。

橋の長さは約五〇〇メートルぐらいで、自転車の歩道通行推奨の標識がある。だからこの橋ではいつも歩道を走るのだが、渡りはじめたら前方に小さく人影が見えた。「横をすり抜けるときにあの人を引っ掛けないように注意しなくちゃ」と思いながら自転車を漕いだ。

自転車の方が人より速い。どんどん追いつく……。

接近するにつれて、気がついた。前を行くヤツの背丈が伸び縮みしていることに。

ニューッと三メートル近く伸びたり普通の背丈に戻ったりを繰り返している!

橋を渡り切る寸前に完全に追いつき、追い抜く瞬間にはハアハアという息遣いが聞こえた。だが、追い抜いてから振り返ったら、ジョギング中の普通の若い男に変じていた。

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