階下(広島県) | コワイハナシ47

階下(広島県)

〝十時十五分〟に悩まされていた頃の話。

Cさんのお父さんは広島県で土建業を営んでいた。

お父さん自身が若い頃ずいぶんとグレていたせいもあるのだろう。そんな少年たちの気持ちがわかるといって、保護監察下の少年や少年院を出た若者たち四人を雇って世話をしていた。

彼らのためにアパートを借りて寮としていた。

ある昼下がり、お母さんは遊びにきていた親しん戚せきの男の子と一緒にその寮へ行った。

寮の廊下に少年たちの洗濯物が入った籠かごが出してあるので、それを取りに行ったのだ。

彼らの洗濯をするのがお母さんの日課である。

寮の玄関に入ると「おばちゃん、ボク手伝ってあげる」と、その子はタタタタッと階段を駆け上がっていった。

一階の洗濯物を集め終わったが、男の子が降りてこない。

「もう帰るから降りといで」と声をかけた。

しんとしている。

どうしたんだろう?

たまらず階段下から見上げると、上にその子がいる。

階段を上がりきった突き当たりの壁に背中をへばりつけて、ブルブル震えながら立っている。

怯えたような目がうるんでいる。

「どうしたの。はやく降りといで」

いやだという顔をして首を横に振る。

「おばちゃんが上がって来て、お願い」と言う。

「どうしたのよ」と階段を上がると、わっとその子が胸に飛び込んできて「おばちゃん、怖い」と叫ぶ。

仕方なくそのままその子の頭を両手で包むようにして階段を降りた。

下に降りると、わあーっと泣き出した。

「どうしたの?何もないじゃない」となだめた。

何を見たの?とたずねると男の子は震えながら、洗濯物の籠を集めて降りようとしたら、階段下にうつむいた男の人がギッシリ立っているのを見た。という。

それが怖かった。すると、その男たちをかき分けるように、おばちゃんが現れた。おばちゃんが階段を上がりはじめると、一階の階段突き当たりにある共同トイレのドアが開いて、中から髪の長い女の人が顔を出してじろっとこっちを見た。

それで胸に飛び込んだという。

一緒に降りたら、あれほどたくさんいた男たちもいなくなっていて、トイレのドアも閉まっていた。と再び泣き出した。

お母さんには、この話に心当たりがあった。

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