八面山大池の火の玉(大分県中津市三光原口) | コワイハナシ47

八面山大池の火の玉(大分県中津市三光原口)

大分県中津市のシンボルでもある「八面山」。

どの方角から見ても同じ形に見えることから、八面山と名付けられたそうだ。また、昔はこの山に矢竹が多く生えていたことから、箭山とも呼ばれているという。

市民の憩いこいの場ともなっているこの山の標高五百メートル付近には、「八面山大池」という農業用水確保を主目的とする溜池があり、大池を一周できる遊歩道もある。そこでは季節の草花を楽しむことができるのだが、夜になると雰囲気は一変し、心霊スポットと化す。

大池付近では自殺が多発しており、女の幽霊が出るという噂があるのだ。

私は大学時代ラグビー部に所属しており、一年生の時、夏合宿で大分の九重まで遠征することになった。

遠征には三校が参加したのだが、その中でも大分の大学に通う「ケイタさん」という人と仲良くなり、その時に八面山大池での話を聞くことができた。

ケイタさんは部活が終わったある土曜日の夜、彼女と二人で夜景を見るために八面山へと車を走らせたそうだ。

免許を取ったばかりでぎこちない運転ながらも、親から借りた車で、彼女と二人たわいもない会話を楽しみながらのドライブはとても楽しいものだったという。

目的の夜景スポットで甘いひと時を過ごした後、このまま帰るのも寂しいということで、せっかくだからもう一ヶ所寄って行こうと、ケイタさんは八面山のさらに奥へと車を走らせた。

細い砂利道を進んで行くと、着いたのは暗闇が支配する開けた場所。

「ここは心霊スポットって言われちょる」

「こげんとこ嫌っち!」

彼女はたいそう嫌がっていたようだが、元来心霊好きであるケイタさんは、幽霊が出るといわれる所に興味があったし、吊り橋効果で愛は深まるかもしれない、そんな考えで無理言って彼女を車から降ろした。

車のライトを点けっ放しにして、彼女と寄り添いながら池へと続く橋を渡っていく。

辺りには木々が鬱蒼うっそうと生い茂っており、風が吹くたびに「ザワザワ」と音を立てるのだが、その音に反応して彼女は亀のようにすぼめた頭で周囲を見渡す。

不思議と人の感情というものは伝染するもので、普段は恐がりというわけではないケイタさんも、彼女の様子を見ていると段々恐ろしくなってしまい、数十メートル歩いたところでもう帰ろうかということになった。

踵を返して車へと歩き始めるが、風は益々強くなっており、辺りからは怒声のような葉擦れ音が迫って来る。

只ならぬ雰囲気に、気丈な彼女が怯え切っている。

(なんや? この池……)

ケイタさんの緊張がピークに達したその時。

ピカッ!

後方に白い閃光が走った。

驚きながら二人で振り向くと、そこには一メートルくらいありそうな白くて大きな火の玉が浮かんでいた。それは左右にふらふらと揺れながら、こちらに近づいて来ている。

「逃げろ!」

震える彼女の手を引いて走り出したが、彼女は石に躓き片方の靴が脱げてしまった。だが、後ろからは火の玉が段々と近づいて来ている。

ケイタさんは、彼女を片方裸足のまま走らせると、なんとか車に乗り込んで発車した。

バックミラーには、白い火の玉が相変わらずふらふらと漂っている様子が映し出されていたが、砂利道を進んで行くうちにそれも見えなくなった。

後日、休みを利用して明るい時間帯に八面山大池へと彼女の靴を探しに行ったそうだが、案外早く見つけることができた。

丁度、靴が脱げた場所の脇に転がっており、焦げて真っ黒になっていたそうだ。

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