モンステラの怪(京都府) | コワイハナシ47

モンステラの怪(京都府)

拙著『実話奇譚怨色』に収録した「大江山のハミング」に登場した雅紀さんから続報が届いた。「うちで五、六年前から起きていた怪異の原因がわかりました」と言うのである。

「大江山のハミング」では、彼の住むマンションが京都府の大江山の麓にあることから、大江山が持つ一種の魔力が怪異の原因のように匂わせて書いた。雅紀さん自身がそう感じていたせいもあるが、なにせ、麻呂子親王鬼退治伝説、『古事記』にある土蜘蛛退治伝説、酒呑童子伝説がある大江山なので、私が勝手に伝奇ロマン風の想像を膨らませた次第だ。

ところが雅紀さんによると、家で頻発する原因は、彼が育てている、ある一株のモンステラが引き起こしていたようなのだ。

モンステラはサトイモ科に属し、深い切り込みが入った大きな葉とエキゾチックな雰囲気で人気のある観葉植物だ。問題のモンステラは六年前に入手したときは小さかったが、今や高さ一五〇センチ、幹の直径八センチ、葉の直径は八〇センチという堂々たるサイズに育った。雅紀さんは植物学者だった父の影響で植物に関しては玄人跣で、モンステラを育てた経験も豊富だったが故に、これほど立派に育成できたわけであろう。

「この子を手入れすると変なことが起きるという規則性に気づいたんです」と彼は言う。

『怨色』で書いたように、雅紀さんの自宅では、室内でハミングが聞こえたり、大勢の人の気配がしたり、幻の怪鳥が部屋に飛び込んできたりしていた。

それらが、手入れ──ことに挿し木や株分けのために、葉や気根などをハサミで剪定した直後に起きるのだという。この「規則性」に気づいたのは三月頃、いちばん大きく育っていた葉がエアコンの風に当たったせいで変色したので、バッサリと切り落とした直後に、目には見えない太い蔓が全身に巻きついて締めつけられたのがきっかけだった。

「葉を切ったせいだと閃きました。だからこの子に声を出して謝ったんです」

懸命に「ごめんなさい、許してください」と謝ったところ、見えない蔓が解けた。

それからは、このモンステラを手入れする際には、事前に「なぜ今こういうことをするのか」と丁寧に理由を説明してから行うようにした。

すると家では怪異現象が一切、起きなくなったのだという。

「自分で買ったわけじゃなくて、友人の美容室の開店祝いとして福岡の植物園から別の観葉植物を取り寄せたら、なぜか同封されていたモンステラなんです。オマケで付けてくれたのだと思って植物園に確かめもせず育ててきましたが、あのとき怪しむべきだったのかもしれません。この子には意思と超能力があるんですよ、たぶん……」

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