宮ヶ瀬レイクライン(神奈川県相模原市) | コワイハナシ47

宮ヶ瀬レイクライン(神奈川県相模原市)

宮ヶ瀬レイクライン(神奈川県相模原市)

神奈川県相模原市にある宮ヶ瀬湖は東京圏の手軽な観光スポットとして人気が高い。自家用車があれば湖畔のドライブがお勧めだ。景観が素晴らしくて見所が豊富だ。

眼鏡屋の重幸さんは二〇年来の親友と、ときどきドライブに出掛ける。あちこち訪ねたが、四年ぐらい前の八月一五日のドライブは忘れられないという。

その日は二人で重幸さんが運転する車に同乗して宮ヶ瀬湖畔へ行った。厚木方面からアプローチして、陽射しが躍る水面が見えてきたのが午前一一時頃。宮ヶ瀬ダムから中津川への流入地点だ。ここから《宮ヶ瀬レイクライン》と呼ばれる湖畔を周遊する道路に入る。

水辺の道を少し行くと、すぐに宮ヶ瀬トンネルに差し掛かる。

トンネルに入るとき、中から青い作業服に黄色いヘルメットといった一見して工事作業員とわかる人たちが四人ばかり出てきて、ちょうど擦れ違った。

それを見て、「この暑いさなかに工事するなんて大変だねぇ」と、彼は助手席の友人に話しかけた。すると友人は驚いた口ぶりで、こう返した。

「え?工事?誰もいなかったじゃん!」

そんな筈はないと思ったが、気を取り直して尚も進むと、ほどなく宮ヶ瀬湖の人気スポット《虹の大橋》が視界に入ってきた。あの橋を車で渡って湖の向こう岸へ行くのだ。

しかし、あれは何か?橋から黒い影が、幾つも幾つも、湖面に落ちていくのだが。

目を凝らして見つめつつ、さらに橋に近づくうちに、墜落するものの正体がわかった。

「わあ!橋の上から繰り返し人が飛び降りてるよ!」

思わず大声を出すと、友人がまた吃驚して、「そんな馬鹿な!」と応えた。

「見なよ。あの橋には高いフェンスが付いてるじゃないか。飛び降りられるわけがない!」

言われてみればその通りなのだが、落ちる人影が見えたことは事実だ。だが、そう指摘されてから急に見えなくなった。納得がいかず、もやもやした気持ちで橋を渡った。

宮ヶ瀬レイクラインも終盤に差し掛かった。《宮ヶ瀬ダム》の方へ車を進めていく。

……と、バックミラーに黒いバイクが映った。

ヘルメットもツナギもバイクのカウルも真っ黒だ。レース仕様の大型二輪で、見るからに本格的な走り屋っぽい。

「おい!後ろのバイク、カッコいいな!」と、重幸さんは感心して叫んだ。

友人は振り返ったのに黙っている。何か言えよ、と、思ったが、そのとき、後ろにいたバイクが前方二〇メートル辺りに忽然と現れたので、重幸さんも言葉を失った。

黒いバイク

友人を助手席に乗せて宮ヶ瀬湖畔をドライブしていた重幸さんは、後ろから来た黒いバイクにいつの間にか一瞬で追い抜かれていた。追い越されたことに気づかないのは面妖なことだが、すぐに不思議がっている場合ではない状況になった。

と、いうのも、件のバイクが激しく転倒してしまったのだ。見ている前で、ガードレールの隙間に突っ込んで山肌にクラッシュするではないか!

重幸さんは悲鳴をあげながら大慌てで路肩に車を停めて、そちらの方へ走っていった。

だが、路面にもガードレールにも何の痕跡も見当たらなかった。

とぼとぼと車に戻ると、助手席に座ったまま彼を待っていた友人が口を開いた。

「一週間前、ここで大学のときの同級生がバイク事故で死んだんだ。宮ヶ瀬に行くと決まったときに、きっとこの場所を通ると思ったんだけど、辛気臭くなるから黙ってた」

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