道玄坂で(東京都渋谷区) | コワイハナシ47

道玄坂で(東京都渋谷区)

Kさんが東京の大学に通っていた頃の話。

用事で大阪の実家に帰っていたが、風邪をこじらせて寝こんでいた。

夜、携帯電話が鳴った。

後輩のH君だった。

「Kさん、綺麗な女の人ですね」

その声がニヤけている。

「女の人?」

「道玄坂を上ってどこ行くんですか?」

「お前何言うとんねん?」

「何って、振り返ったらわかりますよ。実は僕、Kさんのすぐうしろにいるんですよ」

「あのな、俺、今大阪の実家で寝てるねん。どういうことや?」

どうやらH君はたった今、渋谷のセンター街でKさんとすれ違ったらしい。

モデル風のミニスカートの美人と腕を組んでいたので、思わず追いかけた。

人ごみにまぎれて一度追い抜いて顔を見たが、Kさんに間違いない。

あまりに綺麗な女性と一緒だったので、あとをつけているのだという。

道玄坂の先を脇に入ればホテル街だ。

それではと冷やかしの電話をしているというのだ。

「それ、俺か?」

「またまたあ」

「そしたら前にいる俺は、携帯電話で話をしているか?」

そう尋ねた瞬間、「うわっ!」と叫ぶ声が聞こえて電話が切れた。

すぐにかけ直したがH君は電話を取らない。メールを送っても返信はない。

なんだコイツ。

風邪が治って大学へ行くと、キャンパスでH君とバッタリ会った。

「おい、あの時の電話、何やったんや?」

するとH君はKさんが怖くなったという。

あの日Kさんに「携帯電話で話をしているか」と言われて、確かめようと前を見た瞬間、Kさんが女と消えた。

脇道に入ったとかではなくて、本当に目の前で一瞬にして消えたのだという。

人ごみの中にいきなりふたり分の隙間が空いたのだという。

シェアする

フォローする