首なし地蔵(北海道) | コワイハナシ47

首なし地蔵(北海道)

北海道のある湖岸の道路に、ひとつのお地蔵さんがある。

Aさんは若い頃、暴走族仲間と随分無鉄砲なことをやっていた。

ある時、仲間たちとこのお地蔵さんの近くに車やバイクを停めてひと休みしていた時のことだ。

度胸試しをやろうということになった。

何で試すかさんざんもめた挙句に、誰かが、このお地蔵さんの首を吹っ飛ばせたらすごい、と言い出した。

そんなこと誰がやる?

Aさんが手を挙げた。

所しよ詮せんは誰かが石を彫っただけのものだ、と思ったからだという。

車から出されたケンカ用に持ち歩いている金属バットを受け取ると、お地蔵さんの前に立ち、その丸い頭めがけてフルスイングした。

ゴン、と大きな音がして首が落ちた。

すげえ!と拍手が起こった。

しかし落とした首をそのままにもしておけない。

Aさんは首を拾いあげて湖畔まで下りると、砲丸を投げるようにして、湖に放りこんだ。

翌朝のこと。

Aさんは両手に違和感を覚えて目を覚ました。

指の間に何かが挟まっているような気がする。

見ると、すべての指の横にイボのような腫はれ物ができている。

両手の指と指とのすべての間に、八つのビー玉大の腫れ物ができていて、手を閉じることができない。

カッターナイフで切ってみようとも思ったが、腫れ物があるのでカッターをうまく持つこともできない。

そのイボのような腫れ物を見ているうちに、お地蔵さんの首が思い浮かんだ。

お地蔵さんが怒ってる、そう思った。

この日は仕事を休んで、一日中ごめんなさい、ごめんなさい、と開いたままの手を合わせて謝り続けた。

翌朝、気がつくと指の腫れ物がなくなっている。

一晩でできた大きな八つの腫れ物が、今度は一晩で消えた。

元に戻ってから、はじめて本当に怖くなった。

これがきっかけで暴走族との付き合いもやめた。

一年ほどして、友人とツーリング中、たまたまそこを通った。

あのお地蔵さんのところで休息しよう、ということになった。

「そうだ、一度ちゃんと頭を下げて謝っておこう」と見ると、頭が修復されている。

きっと、この一年のうちに誰かが首を新しく作って、載せてくれたに違いない。そう思って近づいて、驚いた。

つなぎめがない。いや、そう思えるほど綺き麗れいに直してある。

ぐるりとひと回りしてみたが、首と肩は間違いなくピッタリ合っている。

よほど腕のいい人が元に戻してくれたのだ、と感心した。ところがすぐに、お地蔵さんの頭が新しい石ではないことに気がついた。

この首は、どうしてここにあるのだろう?

湖の底に沈んでいることは、あの時の仲間以外は誰も知らない。

湖は深いし底は泥のはずだ。わざわざ捜しに潜った人がいたのか?いや潜ったところで見つかるはずがない。

背筋が寒くなって、改めて心の底から頭を下げることができた。

そのお地蔵さんは、今もそこにある。

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