白昼夢の水葬(東京都品川区) | コワイハナシ47

白昼夢の水葬(東京都品川区)

東京都品川区の会社員、高橋知美さんは、八年前の七月半ば、午後二時頃に品川駅構内に入った途端、途轍もなく厭な臭いを嗅いだ。思わずたじろいで歩を緩めると同時に、マネキンのようなものがこちらに向かって流れてくることに気がついた。

それは、行き交う人々の足の隙間を縫って、膝ぐらいの高さで宙に浮かんでいた。

最初は五メートルぐらい離れていたが、たちまち足もとまで来たところを見たらマネキンではなく、うつ伏せになった腐乱死体だ──と、そのときスマホに着信があり、白昼夢から覚めた。

スマホを見ると、婚約者が海で行方不明になったという知らせが……。

「彼の亡骸は数週間後に発見されましたが、あのとき見た遺体は女性で、別人でした」

──江戸時代の一七一六年(享保一年)に疫病が流行して死者が八万以上に及び、棺不足に陥った挙句、現在の品川駅の辺りを含む品川の海などで大量の遺体を水葬した。

汐入の度に遺体が江戸市中に逆流してきて酸鼻を極めたというのだが、さて……。

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