大阪城の怪談(大阪府) | コワイハナシ47

大阪城の怪談(大阪府)

大阪城の怪談からスタートしようと思う。

私は京橋在住なので、家の近所を歩くと、川向こうに立派に聳え立つ大阪城の天守閣が目に入る。気分が沈んだ時も、遠目にもきらきらと光る金の虎と緑の屋根が見えると、ちょっと前向きになれる。

そんな大阪城に雨の日、新聞社の記者さんと天守閣で北川央さんとの取材のために向かった。普段なら大勢の観光客で賑わっている筈なのだが、その日は生憎の天気とやはりコロナ禍の影響もあってか、人影はまばらだった。

大阪城天守閣内にある一室に入ると早速、館長の北川央さんが現れ、色々な話を伺った。その中で、一つ驚いてしまったのが、大阪城に曰く付きの物を持ち込んでくる人がいるというお話だった。

どんな品がというと、たとえば絵巻物。大坂の陣の激闘の様子を描いたものや、幕末に京都で頻発した天誅事件で首が晒された様子が描かれており、いずれも触ると祟りがあると言われ、家に置いておいても気持ちがわるいので引き取って欲しいと言われたとのこと。また所蔵品の中には、江戸時代の幕府の首切り役人が実際に首切りに使用した刀もあるそうだ。

そうした物があるからなのか、どうかは分からないが、警備のスタッフから、誰もいない展示室から話し声が聞こえると言われたことがあるらしい。

関ヶ原の戦いで西軍敗北の原因の一つを作った武将の小早川秀秋の肖像画に話しかけられ、仮眠をとれないと、苦情を訴えてきた警備員もいたそうだ。

また大阪城内には、発掘された豊臣時代の石垣遺構を保存している空井戸状の施設があり、いつの間にか、しめ縄が張られていることがあるという。

かなり気を付けて警備の人たちが何か変化や不審物は無いかと城内を見周りをしているそうなのだけれど、いつの間にか警備の隙をついて、井戸にしめ縄が張られてしまう。

犯人は未だに分からず、誰が何のためにしているのかは不明なのだという。

他にも「怨念が渦巻いている」と言って、大阪城天守閣の周囲に日本酒を撒いて清めに来る人がいるそうだ。

この話を聞いて、四年ほど前に大阪城内を散歩していた時、和服姿の男女に「私たち、大阪城の結界を守る会なんです!」と声をかけられたことを思い出した。

なんでも徳川家康によって埋められた、豊臣秀吉の城そのものの怨念とやらが、地面から染み出していて、その思いがじわじわと大阪に悪い物を引き寄せているらしい。

それを止めるために、城の気が噴出している場所にしめ縄を張っているのだという。

彼らが大阪城の警備の目を盗んで、しめ縄を井戸に張っているのかどうかは不明だけれど、ともかくそういう団体の人たちはいて、今まで三回ほど声をかけられている。

メンバーの顔が毎回違うような気がするので、かなりの人数の大きな組織なのかも知れない。

これは、大阪城での取材が終わってからしばらく経った日に、オンライン取材で、大阪に四十年以上住んでいるという川原さんから聞いた話になる。

「大阪城の敷地内に、秀頼・淀殿ら自刃の地と記された石碑があって、そこをさらに奥に行くと柵で囲われた古びたコンクリート製の階段があるんです。

周りにどんなに観光客がいても、いつもその場所はひっそりしていて、以前からそこは異世界みたいな雰囲気があるなあって感じるんです。

三十年ほど前の話なんですけどね、そこの石段に強く頭をぶつけて自害を試みた人がいたんです。血を吹き出しながらね、額を何度も何度も石段にぶつけ続けててね。

私と近くにいた人が一緒に驚いて、ガンガン頭ぶつけてる人に走り寄って、何してるんです!って聞いたんです。

そしたらね、その人、誰かに、そうしないといけないって石段の上におった女性に何回も言われたから……って答えるんですよ。石段も血でぐちゃぐちゃで、もう凄い姿でしたよ。

それをね、私、今も夢に見るんです。だからあそこは、よう近寄りません」

そう言って、画面越しに見える川原さんは、自分の体を両手で抱きしめて身震いしていた。

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