緑のトイレ(兵庫県加古郡) | コワイハナシ47

緑のトイレ(兵庫県加古郡)

一九七三年の夏、当時小学三年生の小百合さんは、兵庫県の明石市から加古郡に引っ越した。明石市というところは昔から宅地開発がなされた小都市だが、その頃の加古郡は寂寞とした景色が広がる田舎だった。田畑の合間に板壁に瓦屋根を戴いた古い民家がポツリポツリと建っているかと思うと、南の海沿いは一転して無機質な工業地帯で、いずれにしても人は少なく、空ばかりが広かった。

小百合さんが転入した小学校は、しばらく前に創立百周年を迎えたという古い公立小学校で、昭和一九年に建てられた木造校舎をまだ使っていた。この校舎のトイレは建物の外に併設された汲み取り式のボットン便所で、ここには怖い噂があった。

トイレに五つある個室のうち真ん中の一つで以前、女の子が便槽に落ちて亡くなり、以来、その個室に限って白い便器が緑に変わってしまい、この「緑のトイレ」を見ると祟られると言い伝えられていたのだ。問題の個室が閉鎖されていないので、尚のこと恐ろしい。

小百合さんが知る限り、緑のトイレを開けてみた猛者はいなかった。

やがて鉄筋コンクリートの新校舎が建設されて、小百合さんが六年生のとき、木造校舎の閉鎖が決まった。そこで夏休み中に「さよなら旧校舎」というコンセプトで木造校舎で合宿と肝試しが催されることになった。

肝試しの仕掛けが発表されると、生徒たちに動揺が走った。肝試しには「どこそこに置いてある蝋燭を取ってこい」といったミッションが付き物で、このときも幾つかのミッションが課されていたのだが、そのうちの一つが、「外トイレの真ん中の個室を見てくること」だったのだ。……つまり、緑のトイレを見て来いというのである!

三人ひと組で懐中電灯を頼りに順路を巡り、いよいよ問題のトイレに行ってみたら、前の三人組が怖くて中に入れずにいた。

「六人で行けば怖ないで」と誰かが言い、臭くて暗いトイレの中に団子になって入った。

そして先頭の子が「ほな、開けるで」と、五つあるうち真ん中の個室のドアを一息で大きく開け放った。すると一同の目に異様な光景が飛び込んできた。

便座だけではなく、壁や床、ドアの内側まで、緑色のペンキが塗りたくられていたのだ。

小百合さんたちは悲鳴をあげてトイレから走り出た。

その後、二学期が始まると、六年生の女子が一人いなくなっていて、肝試しの後で緑のトイレに落ちて、それが原因で死んだのだという噂が流れた。

転校したと思うべきだが、先生方からはなぜか何の説明もなく、真相は今もわからない。

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