袋小路(東京都) | コワイハナシ47

袋小路(東京都)

八年前のある夜、Aさんというタクシーの運転手が女性客を乗せた。

都内の某所に行って下さいという。

大きな通りの途中から女性客の方から道の指示をもらって細い路地に入って行った。

「あっ、そこです」

そう言われる直前にブレーキを踏んでいた。

なぜならその正面には家が建っている。道はここまでだ。

「ちょっと待っててください。お金、取ってきますから」と女性はその正面の家に入っていった。

ところが、待てどくらせど女性は出てこない。家の明かりもつかない。

やられたかな。

タクシーを降りて、門柱のチャイムを鳴らしてみた。

どんどんと、ドアをたたいてもみた。

しかし、誰も出てこない。

「まいったなぁ」

とりあえず車を出そうか、とふっと後ろを見ると家がある。

あれ?

三方を家が囲んでいる小さなT字型の路地。

もちろん一方は道としてあるにはあるが車は身動きひとつ出来ない。

車体とほとんど同じ長さしかない短い横路地と、表通りへと続く長い縦道で出来たT路地にタクシーがスッポリ入っているからだった。

車の真横に道はあるものの車の前も後ろも家で、ほとんどバックも前進も出来ない。

どうやって入ったんだ?車は出てなど行けない。

困ったのはAさんだけではない。

朝になって集まってきた近所の人たちも同じように困った。

事情を説明すると「その家は空き家だよ。夢でも見たのかい?」と言われた。よく見ると門は閉まっていて錆さびている。

じゃあ、おれは夜どうやってドアをたたいたんだ?

結局会社からクレーン車を呼んでもらってタクシーを吊り上げ、やっと外に出られた。

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