ごて地蔵(大阪市北区) | コワイハナシ47

ごて地蔵(大阪市北区)

移動させようとすると障りがあるモノの話は、大阪に沢山ある。

例えば、他の怪談本の中でも書いたことがあるけれど、梅田の駅から少し歩いた所の、曽根崎警察署にある「ごて地蔵」がそうだ。

梅田はもともと湿地帯を埋め立てて田畑にしたので「埋田」と呼ばれていた。

だがそれだとイメージが悪いからということで、埋を梅に変えて梅田としたらしい。

そんな梅田にあるごて地蔵、「ごて」とは「ごねる」――不平不満を言うことや、難癖をつけることを指す。

昭和四年、伝染病が大阪市内で大流行した時に、不動寺の住職が「この地に埋没放置されている地蔵尊がある、奉祀せよ」と宣託を行ったので、町内の人たちがほんまかいなとぬかるんだ地面を半信半疑で掘ったところ、小さなお地蔵さんが土中から出てきた。

それを見て、町内の有志が祠を作り地蔵尊をお祀りしたところ、伝染病の流行も下火になり、これは霊験あらたかだと評判が広まり、祠には花や線香が常に供えられるようになったそうだ。

しかし梅田駅の近くということで、昭和の経済成長も相まって、道路の拡張で祠を移動しないといけなくなってしまった。

そして、移動の工事を行なう度に付近で火事や事故が起こり、さらには当時の警察所長が落馬で亡くなってしまったので「これは地蔵さんが動くのが嫌やとごててはる」ということで、ごて地蔵と呼ばれることになったのだそうだ。

現在祀られている、警察署の敷地内の場所は気に入っているのか、特に何か「ごてる」ような禍の噂は聞かず、今は交通安全や賭け事にご利益があるという。

ちなみにごてる地蔵を警察署の敷地内に移動した経緯は、昭和十九年に、曽根崎警察署の高橋署長に地元の町内会の人がお願いしたところ「別にええよ」と言ったことがきっかけで、署内に安置することが決まったらしい。

昭和四十九年、曽根崎警察署改築の時はごて地蔵尊を太融寺に預けたそうなのだが、その時は改築が終わればまた元の場所に戻れることを知っていたからか、特に「ごてる」ことはなかったらしい。

新型コロナ・ウィルスが流行中ということで、かつて疫病を鎮めたご利益を求めて、最近は益々参拝者が絶えないようだ。

二〇二〇年の夏に、ごて地蔵の話がラジオで紹介された。

すると、後日その放送を聞いた人から、ごて地蔵に纏わる話をしたいと連絡をいただき、オンラインチャットで取材を行なうことになった。

これは連絡をくれた松井さんから聞いた話になる。

「私、天神橋筋六丁目の近くで飲食店やってます。コロナ・ウィルス感染症の流行の影響で、もう売り上げがガタ落ちで大変なんです。

それでも来てくれるお客さんがおってね、その人から不思議な話を聞いたんです。梅田のどっか地面から出てきたお地蔵さんがあって、商売とか色んなことにご利益あるって。

でも、場所が分からへんかったんですよ。お客さんが覚えてなくって。もうお参り行きたいのに、ってがっかりしたんです。

私はね、普段神さんとか仏さんとか信じてへんけど、こんな状態やったらなんでもすがる!って気分やったんです。今もそれは同じです。

店を閉めた後に、風水でも意識したらええんやろかと思って、トイレ掃除したり色々やってて。集中してると時計を見なかったら、時間が分からなくなることってあるでしょ。店のあちこちを磨いてて、気が付いたら朝になってたんです。

もう流石に休もうかなって思ったら、カウンターに古いラジオが置いてあってね、あれ?ラジオなんてここ置いたかなあ、掃除の時にどっかから出て来て無意識に置いたんかな、これ動くんかなと思いながらスイッチ入れたんです。

そして何気なく放送聞いてたら、梅田のお地蔵さんの話しててね、名前は『ごて地蔵』って紹介されてて、きっとそれや!わたしがお参りしに行きたかったお地蔵さんの名前と場所が分かった!って思って、サンダル履いてそのまま、お地蔵さんのところまでタクシーで行きました。

道が朝日で輝いて見えて、近くでタクシー下りて、走って行ってお堂の前で手を合わせたんです。そしたら自分の頭の中にパッと急にタンスが浮かんで。

それでああ!ってなって、急いで家に帰ったの。

頭に浮かんだタンスの引き出し開けてみたらそこでね、死んだ母のへそくりを見つけて。

母親が亡くなった時、遺品整理した後に、そこに置いたまま忘れてたんです。

株券と現金があって、それほど大きな金額じゃなかったけど、この状況だからほんまに助かりました。

でも、まだまだやっぱり苦しいから、また何かないかなって思って、もう一度ごて地蔵にお参りに行ったんです。

で、パッとお地蔵さんの姿を見た時にね、これはアカンって感じたんです。

お地蔵さんから怒りを感じたんです。

正面から姿を見た時にね、怖いくらいに怒っているって。

これは恐ろしいお地蔵さんやなって、さすが〝ごてる〟と呼ばれてるだけあるなって。

だから、都合のええことばっかり願ったら、アカンのやろうなって。

自己努力せなアカンって、教えてくれたんかな。

多分ね、空気読まんとなんべんも自分のことばっかりお願いしてたら、あのお地蔵さん私に酷いことしたんと違うかな。

でないと普通、伝染病を収めてくれた、ありがたいお地蔵さんに〝ごて〟なんて呼び名、付けへんでしょう」

後日、ごて地蔵の話をラジオで紹介してくれたアナウンサーさんから、こんな話を聞いた。

「実際にごて地蔵を見に行ってみたら、なんでも商売や色んなことにご利益があるお地蔵さんだから来ましたと言って拝んでる人がいましたよ」

私も気になったので、この本が売れるようにと、その話を聞いた後にごて地蔵にお願いしに行った。私の身には何も起こっていないので、今のところ「ごて」られてはいないようだ。

シェアする

フォローする