犬女(千葉県) | コワイハナシ47

犬女(千葉県)

この話は、ここでは仮に澪さんとする千葉県在住の二三歳の女性がツイッターに投稿した怪異体験談だ。澪さんは私に幾つかの体験談をご応募されて、その際に、これも紹介してくれた。ご本人の許可を得てリライトしているので、決して盗用ではないことを述べておく。

ある日の黄昏どき、澪さんが家に独りで留守番をしていると、玄関の引き戸が外から激しく叩かれた。

何だろう……と、観ていたテレビを消して、廊下へ出たところ、西陽が差す玄関の外にいる灰色をした獣の姿が、引き戸の磨りガラスを透かして見えた。

カリカリカリカリ、カリカリカリカリ

獣は、前肢の爪で引き戸の戸袋を引っ掻きはじめた。仕草は犬そのものだが、頭の形がおかしい。長い黒髪を左右に垂らした、人間の女の頭部のように思われた。

信じられない思いで上がり框から見ていると、そいつが口をきいた。

「わんわん、くぅん、くぅん、開けてぇ」

若い女の声だった。「くぅん、くぅん」と犬の鳴き真似をしながら、カリカリと戸袋に爪を立てている。

やがて、戸を開けてもらえないことに苛立ったのか、それは引き戸に当身をした。

破られては大変、と、澪さんは三和土に飛び降りて引き戸を押さえた。磨りガラス越しに間近に獣の顔が見え、その造作が人の女であることがはっきりわかって、恐ろしさに膝が震えた。身体は大型犬のようなのだが……それとも人間の女が犬のように四つん這いになっているだけなのか……。

「開けてぇ!ねえ、開けてよぉ!」

犬のような女は顔を上げ、今や明らかに澪さんに向かって訴えていた。

「くぅん、くぅん、開けてぇ!開けてってばぁ!」

「開けるか!馬鹿!」

──勇気を振り絞って怒鳴ったら、女のような犬はようやく退散した。

その数日後、澪さんが家の近所を歩いていたところ、大きな犬が路地から飛び出して襲い掛かってきた。咄嗟にうずくまって頭を両腕で守る態勢を取ったら──噛みつかれることも覚悟していたのだが──思いがけず澪さんの腕をペロペロと舐めはじめた。

そこで恐る恐る顔を上げると、異様に長い舌を垂らした女と目が合った。

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