私の死に顔(千葉県) | コワイハナシ47

私の死に顔(千葉県)

苦手なご近所さんと顔を合わせるのは気ぶっせいなものだ。澪さんは、近所のイダさんというおばさんが苦手だ。中学生のときに家族に内緒で東京へ遊びに行ったのが、なぜかイダさん経由で親にバレたり、犬の散歩中に野良猫を触っていたら、「猫が好きなの?」とスマホにメッセージを送ってきたりして、何かと絡んでくる上に、常にこちらを見張っていることが明らかで、気味が悪いからだ。

澪さんは短い間、千葉の実家を離れて東京に働きに出ていたことがある。そのときはイダさんの監視の目から逃れられてホッとした。

しかし程なく実家に帰ってきてしまった。すると、家に荷物を下ろしたその日のうちにイダさんがスマホにこんなメッセージを送ってきた。

「祈りが通じた!」

どんな祈りよ?と、前にも増してイダさんを疎ましく思った。

それからは二日に一度ぐらいの割でイダさんに出くわしてしまう。警戒してイダ家の前を通らないようにしているのに、どこへ行っても遭遇する。その度にベタベタくっついてきて、なんだかんだと話しかけてくる。

どうしても我慢がならなくなってきて、ある日とうとう、「あまり話しかけないでくれます?」と露骨に冷たい態度で言ってやった。

イダさんは青い顔をして逃げていった。

しばらくして、その報復なのだろうと思うが、最近、澪さんが風邪をこじらせて家で寝込んでいたら、新型コロナウィルス感染症で死んだという噂をイダさんに流された。

風邪が治って久しぶりに散歩に出て、途中でコンビニに入ったら、たまたま買い物に来ていた顔見知りが澪さんを見るなり悲鳴をあげたのだ。

幽霊だと思われたのだった。逃げようとするのを捕まえて話を聞いたところ、イダさんが噂を流していることが判明した。イダさんは町でいちばん大きな病院で看護師をやっているから、噂を聞いた近所の人たちは皆、信じてしまったようだ。

「でも、イダさんは澪ちゃんの死に顔の写真を持ってたよ。コロナで死んだ遺体は袋に入れられたまま火葬されて誰も最期の顔を拝めない、だから遺族に見せるために病院で写真を撮ってあげてるんだと説明されて……死に顔を見せられたから……信じちゃった」

「私の死に顔?」

「うん。明らかに死んでたね。あれを見た人は皆、澪ちゃんが死んだと思ってるはずだ」

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