赤い振袖の女の子(宮城県仙台市) | コワイハナシ47

赤い振袖の女の子(宮城県仙台市)

学童保育に通ってた小学校低学年の頃に、美咲さんがハマっていたのは探検ごっこと虫採りだった。

学童保育の施設の裏に山があり、仲間と山の藪の中に分け入ってよく探検をした。

先生方には「その山さ入ってはいげね!」と禁じられていたが、そのため尚のこと愉しかったものだ。

山の斜面を一〇〇メートルばかり登っていくと、明るく開けた広場があって、何度かそこで陣取り遊びをした。東軍と西軍に分かれて水風船を投げ合って戦うのが面白かった。

広場の隅に、山桜の大木が一本あり、五月の中頃になると見事な花を咲かせた。しかし、その木の根もとはいつも嫌な臭いをさせていて、子どもたちは、近くに住む人たちが死んだ犬猫をここに埋めているからだと信じていた。

だから気味悪がってこの桜に近づかない子もいたが、美咲さんは平気だった。

普通、桜は樹液の粘度が高すぎるのでカブトムシやクワガタが寄りつかないものだけれど、この木に限っては夏になると甲虫類が集まった。また、花の季節には蝶々やカナブン、カマキリがやってきた。

東北の春は遅い。桜が終わりかけて、地面に花びらが散り敷かれていたから、六月の初めぐらいかもしれない。ある日、美咲さんは独りで、この山の広場に遊びに来た。そして、何か面白い虫がいるかしら……と、桜の木に近づいていこうとして、ちょっと驚いた。

高い梢の方の横枝に、真っ赤な振袖の着物に身を包んだ、自分と同じ年頃の少女が腰かけて、素足をブラブラさせながら、こちらを見ていたのだ。

目が合ったら、ニコッと笑って手招きした。

可愛い顔立ちの子だ。真っ黒な髪の毛が異常に長くて、毛先が振袖の袂に届いているし、こんな山の中でお正月か七五三みたいな格好をしているのは如何にもおかしなことだった。

しかし、そのとき美咲さんの胸に去来したのは「あいな高えどごろまで登れるどは、凄い子だ!」という、あたかも格闘家が自分より強い相手に出逢ったときに感じるような尊敬と憧れの念であった。

そこで喜び勇んで桜の下に駆けつけたのだが、幹に手をついて見上げたら女の子の姿が無かった。木から離れて梢を見ても、葉桜が風にそよいでいるばかりだった。

それから一年ぐらい経って、夜、テレビの心霊番組を観ていたら、後ろの方からケタケタと不気味な笑い声が聞こえてきた。母がふざけて怖がらせようとしているのだろうと思ったが、振り向くと、あの赤い振袖の子が笑いながらスーッと薄れて消えていくところだった。

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