次は……(兵庫県神戸市) | コワイハナシ47

次は……(兵庫県神戸市)

ほくろを祖母から継いだ話の春夫さんから再びご連絡をいただいた。

そのとき彼は「つい昨日の出来事」と言っていたから、二〇二〇年二月二八日に起きたことだ。時刻も明らかで、午後八時四五分に、彼は勤務先の最寄駅であるJR神戸線の元町駅に徒歩で到着した。自宅は一駅目の神戸駅の傍で、電車は六分毎に来るはずだった。

ところが一〇分以上経っても来ない。そこでツイッターでJR西日本の運行情報アカウントを検索してみると、沿線の西宮駅で人身事故があって遅延していることが判明した。

徒歩で帰れない距離ではないが、疲れていたので駅前からタクシーに乗ることにした。

タクシー乗り場で、この辺りではメジャーなタクシー会社の車に乗った。運転手は六〇歳前後で小柄で小太り、眼鏡を掛けた顔に愛嬌があって人が好さそうな感じだ。

春夫さんは行き先を告げると話しかけた。

「西宮駅で人身事故があったみたいですよ」

「そうなんですか。前に西明石駅で人身事故があったときも、お客さんを送りました」

運転手は快く会話に応じた。そこで春夫さんも言葉を繋げた。

「なんで電車に飛び込んだりするんでしょうね」

「ほんまに遺族の方もお気の毒やねんなぁ……」

元町駅から家までの距離は二・七キロで、タクシーなら一〇分足らずの道程だ。

ほどなく、神戸駅付近の大きな交差点に差し掛かった。赤信号で停止すると、運転手が突然、「実は私の家は呪われてるんです」と告白し始めた。

同時に車内に冷気が満ちた。物理的に温度が下がったとしか思えないが、その冷気の出所が、後部座席の自分の隣、運転手の真後ろの辺りのようなのだ。

こういうときに限って信号がなかなか変わらない。

「私の父が中古の仏壇を買うてきて……それが、後からわかったんですけど、恨みのある男を呪い殺すために、その仏壇に向かって拝んどった女性がおったらしゅうて……。まず父が死にました。それから長兄が死に、下の兄も死に……次は私の番やさかい……」

「怖いですね!」と春夫さんは抗議のつもりで言ったが、運転手には通じなかった。

「……実家から逃げ出してきたんですよ。……ほやけど、助かるかどうか……」

また一段と空気が冷えてきた。このままでは凍えてしまいそうである。

「あのっ、ここでいいです!降ります!釣銭は取っといてください!」

春夫さんは素早く支払いを済ませて車を降りた。

タクシーのドアが閉まる刹那に、運転手を真後ろから睨む長い髪の女が見えた。

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