平和記念公園(広島市) | コワイハナシ47

平和記念公園(広島市)

現在、春夫さんは神戸にお住まいだが、出身は広島で、大学は福岡県にある国立大学に進学した。今から二六、七年前、彼が二一歳の頃、夏休みで広島に帰省したとき、高校の同級生八人と集まった。春夫さんを入れて九人。ちょっとした同窓会の様相だ。

広島市の繁華街で、まずは居酒屋、次にカラオケボックス……と梯子して、財布の中身が乏しくなった午前零時過ぎ、公園で飲んで〆としようと誰かが言いだした。

皆で同意して、ぞろぞろとコンビニに行って酒とポテトチップスを買った。だが、適当な公園がなかなか見つからない。どこも真っ暗だったり不良がたむろしていたり……。一行はコンビニのレジ袋を提げて夜中の街を歩きまわり、やがて《平和記念公園》の傍までやってきた。すると遠目からでも園内が明るくライトアップされているのが見てとれた。

「あそこにせん?」と一人が提案すると反対する者がなかった。

通称「原爆死没者慰霊碑」で知られる《広島平和都市記念碑》の前に広々とした芝生の植え込みがある。今ではそこは侵入が禁止されているように私は記憶しているし、当時も駄目だったのかもしれないが、春夫さんたちの目にはうってつけの宴会場と映った。

さっそく芝生の真ん中で車座になって酒盛りを始めた。

やがてトイレに行くヤツが出てきた。しばらくして後ろから肩を叩かれたので、そいつが帰ってきたのかと思ったが、振り向くと誰もいない。ちょうどそのとき小用を済ませたのが戻ってきたから、「われ、脅かそうとしてわしの肩を叩いたじゃろう?」と訊いた。

「やっとらんよ」と答えたヤツが、言った途端に「何?」と後ろを振り向いた。そっちには芝生しか無いのである。さっきの自分と同じだ、と、春夫さんはうそ寒い思いがした。

その直後、三〇〇人ぐらいの全身が焼け爛れた原爆被害者が自分たちを取り囲んで、興味深そうに……それとも恨めしそうに……覗き込んでいる光景が視えてしまった。

春夫さんの表情が変わったのを見て、仲間たちが「なんかおるん?」と騒ぎはじめた。

春夫さんは誤魔化そうとした。霊感があることは自覚していたが、幽霊が視えるなんて言ったら頭がおかしいと思われるのがオチだ。「いや別に、なんも……」

ところがすぐに、今度は六人ばかりも同時に「何?」と背後を振り向き、途端に一斉に絶叫した。悲鳴をあげただけではなく、文字通りピョンと飛び上がって公園の出口を目指して駆けだしてしまった。春夫さんと残りの二人も芝生にゴミを置きっぱなしで後を追った。

公園からだいぶ離れてから、皆でひと息吐いて話し合った。

「めっちゃおったよな」「そう言えば、お盆や」「わしにも視えた!初めてじゃ」

春夫さんは「視えたんなら先に言うてくれ」と後で仲間に責められたということだ。

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