高速道路の白兎(滋賀県) | コワイハナシ47

高速道路の白兎(滋賀県)

二〇〇三年の一一月中旬、当時三一歳の会社員だった春夫さんは、東京から勤務先がある愛媛県松山市へ、社長を乗せた車を運転して帰ることになった。

公共の交通機関を使えば楽なのに、と、彼は内心思っていたが、社長はあくまでも車で移動することにこだわった。復路も車で、休憩時間を除いても一〇時間以上を要した。

同じ道を帰ったわけだが、社長が高熱を発して後部座席で寝ている点が往路と異なった。

東京出張中に社長は風邪をこじらせてしまったのである。行きでは社長が途中で少しだけ運転を代わってくれた。しかし今度は春夫さんが全部、運転するしかない。

東京を午後二時頃に発って、名神高速道路の滋賀県・竜王インターチェンジを通過したのは夜の七時半を少し回ったぐらいだった。インターチェンジを過ぎると、次第に周囲が森に呑まれた。次のサービスエリアで休もうと思いながら山中の道路を進んでいく……と、遥か前方に何か白っぽくて小さなものが二つ現れた。

遠いから細かなところはわからないが、ぴょこたんぴょこたんと仲良く並んで跳ねている。あのようすからして兎だろう、と、春夫さんは推理した。野兎は茶色いものと思っていたが、白いのもいるのかもしれない。どうやって高速道路に迷い込んだのか……。

──轢きたくないなぁ。

春夫さんはバックミラーを見て後続車がいないことを確認すると、車線を変更した。

二羽の兎は進行方向でまだ跳ねている。

後ろから車が来る気配はない。好奇心から、通りすぎざまにあの兎たちを観察してみたいと思い、彼は速度を緩めた。

接近するにつれて、兎にしては格好が変だと気がついた。耳はどこだ?

……あれは……人の足じゃないか!

くるぶしを備えた足首、足の裏、五本の指まで、紛う方なき人の足!

足首の少し上の方から先はスーッと薄れて消えているが、一対の骨太な男の足が踊りながら歩いている。

リズミカルにステップを踏むような動きが、兎が跳ねているように見せていたのだった。

呆気に取られながら横を通り過ぎて、サイドミラーで確かめたら、まだ跳ね踊っていた。

その後、寝ていた社長をサービスエリアで起こして、このことを話したが、社長は熱に浮かされた赤い顔をして「早う帰ろう」と言うばかりだった。

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