一家失踪事件・京丸ダム(広島県世羅郡世羅町) | コワイハナシ47

一家失踪事件・京丸ダム(広島県世羅郡世羅町)

広島県世羅郡に『京丸ダム』という場所がある。平成八年に建設された灌漑用重力式コンクリートダムで、湖名は『香竜湖(こりゅうこ)』。総貯水容量は約五〇万立米、四角い建物に三角屋根の取水施設がお洒落で、自然の景観が美しい場所である。

ダムと言われれば自殺や心霊スポットを連想しやすいが、京丸ダムではそういった噂は聞かない。ちょうど私が大学生の時に起きたある一件の出来事を除いては。

それが現在も未解決事件として取り沙汰される『広島一家失踪事件』だ。

事件の概要を説明すると、二〇〇一年六月四日、京丸ダムから南へ約一〇キロ離れた場所に住むYさん一家が忽然と姿を消したのである。

被害者は御主人と妻、娘と祖母そして愛犬。

まず六月三日。公立小学校の教諭をしている娘が、一人暮らし先から実家へ顔を出す。

「化粧品を取りにいく」と結婚の約束をしている男性に連絡をしていた。家族仲は良く、実家に戻ることも度々あったらしい。

同日二二時五〇分頃、近所の者が車の扉を閉める音を聞いている。

翌日の六月四日、朝四時に新聞配達員が朝刊をポストへ。Y家の自家用車はなかった。

同日昼、妻は社員旅行に出掛ける予定だった。けれど集合時間になっても姿を現さないので同僚がY家を訪れる。

玄関や窓には鍵がかけられていたが、台所や廊下から明かりは見えた。外から名前を叫ぶが反応はなく、不審に思った同僚はYさんの親族を調べて連絡。

親族は警察を呼び自宅内へ。家の中は争った様子もなく台所には朝食用の味噌汁が用意されており、電気やテレビはついたまま。妻が準備したであろう旅行カバンや現金一五万円は封筒に残され、貯金通帳も置かれていた。

御主人のポケベル、妻や娘の携帯電話も家で発見される。祖母が使っていた布団は人型に持ちあがっており、直前まで寝ていたことは想像に難くない。更に娘の部屋から綺麗に畳まれた洋服が見つかる。寝間着か部屋着に着替えたのだろう。

改めて捜索願いが出され機動隊が動き出す。ヘリコプターによる捜索も行われたが一家は見つからなかった。

翌年の二〇〇二年九月七日、地域住民から「京丸ダムに車が沈んでいる」と通報が入った。結果、ひっくり返った車内から山下さん一家と愛犬の白骨遺体が発見された。娘以外はパジャマにサンダルという姿。

その年、深刻な雨不足によりダムの水位が下がったことから車が発見できたと思われる。

車体はナンバープレートが折れ曲がり、フロントガラスにヒビが入っていたが、大きな損傷はなかった。窓は運転席だけ開いており、車の鍵は刺さったまま。ギアはニュートラルに入っていて全員がシートベルトを付けていなかった。

ダムの入り口には転落防止用の車止めがあり誤って侵入したとは考えにくい。警察は関係者等から事情聴取を行い『無理心中』と断定。事件は一応の解決をみた……。

が、明らかに無理心中とは考えにくい。まず近隣住人からの聞き込みによるとY家の仲は円満そのものといった家庭であり、他者から怨みを買うような家族ではなかった。お金に困っていたという話もない。

不可解な点は多々ある。娘はたまたま実家に戻っていた。心中とは辻褄が合わない。パジャマにサンダル、犬まで連れていった点、電気やテレビはつけっぱなしなのに、施錠だけはしっかりしている点……どれもこれも謎だらけだ。

一部では妻が職場の同僚と不倫関係にあり、それを知った御主人が無理心中を図ったという噂もあるが、実際そのような証拠はない。

もう一つ、『神隠し説』がある。現場付近にある大将神山は古くから神隠しの伝承が残されている山で、その被害者とされたのがY家の祖先であったとか。

ここで私の個人的解釈を語らせてもらいたい。

とある心霊話なのだが、一家団欒中に突然観ていたテレビからノイズが走った。それがきっかけとなり家族が狂ってしまったという内容である。

両親の口は半開きとなり、瞳孔が開いていたという。心配になって話しかけると、脈絡もなく「ところで、あなたはいつ死ぬの?」と母親が話し始めた。聞き間違いかと思っていると父親まで「そうだな。いつにするんだ?自殺か?他殺か?」と言い出す。

恐ろしくなった体験者は家を飛び出て友人宅へ逃げ込む。友人は話を聞いた後、有名な悪霊祓いの住職を見つける。住職は「危険な状態だ、すぐに現場へ案内してください」と言ってくれたので再び自宅へ戻った。家の中は正に地獄絵図といった感じで、父親は両腕と両足から血を流しながら徘徊を繰り返し、母親は浴槽で溺死を試みている。更に弟は自分の身体にカッターで住所を刻み込んでいたのだとか。その後、住職の力をもってしても家族を元に戻すことは叶わず、今も施設で奇行を繰り返しているという。

作り話だと決めつけるのは簡単だが、私自身も似たようなことを体験した覚えがあった。幼少期に見たテレビ欄にも残らない不気味な放送。それを最後まで観た者は不幸に見舞われ、更に同時期同じ番組を見たという目撃情報が全国から多数寄せられていること。

脳は電気信号によって情報をやり取りされていると聞く。催眠術に私は詳しくないが、理論的には似たようなことではないかと思う。『呪い』も、もしかすると計画的に意図されたものなのかもしれない。

話を戻そう。私が気になったのは「Yさん宅のテレビがつけっぱなし」だった事実。一家団欒中だった時、突然テレビから『自殺を示唆する番組』が流れたとしたら。

突如狂った家族は眠っていた祖母を起こし、犬を抱いて家を出る。死に場所であるダムを目指し、車内で楽しそうに笑い声を上げながら……。

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