入院中の話(大阪府) | コワイハナシ47

入院中の話(大阪府)

これは私が三週間ほど、吹田市にある大学病院に入院していた時の話。

病室には八つベッドがあり、常に半分以上が埋まっていた。

私はドアに一番近い場所のベッドに寝ていて、ぽたぽたと垂れる点滴の雫を眺めながらぼんやりと日々を過ごしていた。

ある日のこと、手術の痕が熱を持ったように熱く感じて、痛み止めも鈍くしか効いてくれず、さっぱり眠れそうになかったので、看護師さんについ「何か怪談はありますか?」と聞いてしまった。

看護師さんはにっこりと微笑んで「えーっと怪談ですか?聞いたことないかなあ。あっでも、ここの病院を建てた時に、古い人骨が沢山見つかったみたいですよ。でも私、一度も幽霊は見たことないです」と言って、手際よく点滴の薬剤の入った袋を取り替えると、立ち去ってしまった。

だが、ある朝、診察に来た医師が、こんな話をしてくれた。

「なんか怖い話とか聞いたり書いたりすんの、好きなんやて?僕ねえ、一度病院内でトーテムポール見たことあるよ。体を左右に揺らしてのしのし歩いてて、えーなんでやろうって思った。他にも、目の大きいビーズの人形が、カーテン揺らして遊んでるの見たことあるって人がおったりしてね、近くにみんぱくあるでしょ、国立民族学博物館。あそこから、なんやここって気になって、見に来たりしてんのかなあって思ってる」

「それ、見て怖かったですか?」

「いや全然。なんでやろう?おっかしいなあって感じたくらい。ああでも、万博公園あるでしょ。あそこ通るとたまに幽霊を見るって学生や患者さんおるよ」

医師とのやりとりを聞いていたのか、その日から同室の患者さんが色々と不思議な体験を話してくれるようになった。

隣のベッドにいた人は手術後、麻酔が覚めて目を開けると、モアイの石像が自分を見下ろしていたらしい。

麻酔後は幻覚を見ることがあると聞いていたので、慌てず驚かずにしげしげと珍しい物を見ているなあ、幻の割にはリアルやなあと、自分を見下ろしているモアイ像を観察していたそうだ。

そして同室の別の患者さんからは、こんな話を聞いた。

「私、通院してた時に万博公園を散歩すんのを毎回楽しみにしていたの。お薬貰ったあとに、ちょっと今日もお散歩行こって公園に向かったら、首から上が無い作業着姿の男性が、どんどんと太陽の塔を拳で叩いていたの。固いコンクリートで出来た塔やのにね、痛くないのかなあってそれを見てて心配になってね。最初は何か大道芸か手品やと思ってた。でも、見てても痛々しいだけで面白くないし。それに、周りには多くの人がいたのに、誰もそこに目を向けてないし、騒いでいなかったから、きっと見えていたのは私だけだと分かって。これは、頭がおかしくなってしもたんとちゃうかって、凄く不安になって、病院で調べて貰おうかどうかって悩んだこともあってん。前にお医者さんの話を聞いて、少し安心した。お医者さんでも、変なもん見ることがあって、あっけらかんとしてんねんから平気やねんなって」

と、微笑んで蜜柑を一つくれた。

シェアする

フォローする