廃ホテルのマネキン(九州地方) | コワイハナシ47

廃ホテルのマネキン(九州地方)

九州某所に廃ホテルがあった。

完成当初は沢山の人で賑わって、かなり儲かったらしい。

が、立地のせいで客足が鈍り、遂には廃業の憂き目に遭った。

以降、心霊スポットと化したと言う。

そして、肝試しに来る人間が様々なトラブルが起こすようになった。

例えば、勝手に進入して怪我を負う。真夜中に集まって迷惑行為をする。

物見遊山でやって来た女性を狙って暴行を働く輩がやって来る――。

だから、進入禁止の看板が立てられ、警察によるパトロールの巡回路となった。

では、ここは本当に心霊スポットだっただろうか?

幾つかの目撃談や体験談が存在しているのは確かであり、更にそれらの中には客観的視点で捉えられているものも多かった。

だから、この廃ホテルへ足を運んだ人物が居る。

到着したのは夕暮れ時であった。

立ち入り禁止だからと彼は外からじっと建物を見詰める。

ホテル自体、かなり傷んできていた。

窓硝子は割れ、カーテンの切れ端が風に揺れている。

駐車場やリネンなどの搬入口にはゴミが散乱したままだ。

かつて客を招き入れていた入り口の脇に、女性の下着が吊されていた。

彼はもう一度、ホテルを見上げた。

かなり上の階にある割れていない窓が夕日を反射している。

だが、その横、窓枠しかない部分に何かがぶら下げられていた。

一瞬、心臓が止まりそうになる。

何故なら、それが生首に見えたからだ。

目を凝らすと、美容師がカットの練習に使う首だけのマネキンらしいと分かる。

紐か何かで吊されているようだ。

なんだ、悪趣味だなと視線を下げる。

(……あれ?)

入り口の脇に、同じようなマネキンの首が吊されている。

さっき見たときは、下着、それもブラジャーだったはずだ。

もう一度、視線を上げた。

あの窓に、マネキンはなくなっていた。

恐る恐る入り口へもう一度目を向けた。

ブラジャーが風に揺れていた。

彼はそのままその場を後にした。

その後、この廃ホテルは取り壊され今は存在しない。

――この廃ホテルは、九州四県の何処かにある。

しかしここでは明らかにしない。

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