まめだぞろぞろ(大阪府) | コワイハナシ47

まめだぞろぞろ(大阪府)

中崎町の画廊で知り合った、古い家にお住まいの土井さんから聞いた話。

古い家には小さい狸、豆狸が憑いてることがあるんです。

僕が住んでる家も、空襲で焼け残った古い家やからか豆狸がおったんです。

近くに地車稲荷があるから、その眷属やったんかもしれません。

北区の南森町駅からちょっと歩いたところに、堀川戎神社があるでしょ。

そこにある地車稲荷神社は、地車吉兵衛っていう老狸の霊を祀った社なんです。お稲荷さんなのに狐じゃなくって狸なんですよね。

お爺ちゃんから聞いた話なんですが、老狸吉兵衛は非常に陽気な性格で、夜中になると地車囃子を真似た音を豆狸たちの前で披露してたそうなんです。

だから社の前を夜に通ると、楽し気なお囃子が聞こえてきて、ああ狸がまたやっとるなあと思ったみたいで。

それでだんだん調子に乗ったのか、老狸はやがて季節を問わず、どこからともなく、チンチコ、チンコンコン、チキチンコンコンって地車の囃子の音を出すようになって、時々家の前を掠めて音だけが通り過ぎて行ったこともあったようです。

天神祭りが近くなると、あちこちから本当のお囃子が聞こえてきたりするから、老狸も嬉しかったんでしょうね。七月になると、地車稲荷の方ではちらちらと赤や青の妖しい陰火が揺れてるのを見たって話も聞きました。

子供のお願いをよく聞いてくれるよっていう噂でね、願いが叶うと今でも夜に地車囃子が聞こえるそうなんです。

願いが叶ったらね、老狸吉兵衛へのお礼に小さな地車の模型や、可愛らしい狸が地車を曳いてる図柄の絵馬を奉納したりするんです。

そんなん聞いても昔は嘘やって思ってたんですけどね、堀川戎神社の横のひっそりとしたお社で手を合わせてた後にね、狸の神様なんて今はおらんやろって言うたら、風もないのに木がざわざわ揺れて、あれはビックリしました。

他にも、家で「見てみいや」ってお爺ちゃんに言われて床下を覗き込んだらキラキラと光る五百円玉くらいの目玉が幾つもあって、翌日唐揚げ弁当の唐揚げだけが抜かれてたんですよ。

いや揚げたてを弁当に詰めて、ちょっと目を離した数秒でですよ。あれは人間の仕業やないですね。

爺ちゃんが家族旅行の前の日に、最近ゴキブリがようさん出るからって、燻煙式の殺虫剤を焚いたことがあったんです。

そんで旅行から帰ってきたら「お隣さんからお宅の家からなんや、黒いもんがぞろぞろって出て来たん見たよ。子犬にしては変やしイタチかなんか分からんけど、ざわざわえらい沢山おったで」って言われて。

ああそうや、うちには豆狸がおったんや、悪いことしたなあって。そんなことをしてしまったせいか、最近はさっぱり豆狸を家で見ないんですけどね。

でも、うちの息子がまめだ、まめだ、って呼びかけると、家の中に飾ってある十日戎の笹がね、たまにガサガサ鳴ることがあるんで、見えないだけでまだおるんかもしれません。

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