茶屋町怪談(大阪府) | コワイハナシ47

茶屋町怪談(大阪府)

MBSラジオの人気番組「茶屋町怪談」の出演依頼が来た。

出演者の皆さんが豪華で、そのうえ私は緊張するとテンパって、どもる癖があるので、どうしようかなと思っていたところ、某怪談師さんから「田辺さんは意外と図太いし無神経だから大丈夫ですよ。そもそも出たがりじゃないですか」と言われたので、それもそうだなと出演を快諾した。

収録場所は、番組名にもある通り茶屋町なのだが、東京に置き換えるとどこになるだろう?青山とかその辺りだろうか。

ともかくお洒落で、カフェや若者向けの服屋があって、空気まで大阪らしくないというか、なんとなくハイソな雰囲気が漂う地域なのだ。

そんな場所に建っているMBS放送局の近くに、赤い前垂れをかけたお地蔵さんが祀られている。

どこからか移転されたのか、四角いブロック塀のような社に六十センチほどのお地蔵さんで、私が見た時は、切りたての生花が沢山供えられていた。

由来が気になったので、色々と調べてみたのだけれどハッキリしなかった。

知り合いの郷土史家の人に聞いてみたところ、焼け跡から発見された焼け跡地蔵で、普通そういったお地蔵さんは、開発があると近くのお寺か、どこかに移動されることが多いけれど、ごて地蔵のように移動させると祟りや障りがあると、その場所に留まるケースもあるということだった。

ラジオ局の人にも聞いてみたところ「あれ?そんなところにお地蔵さんなんかありましたっけ?」という返事で、詳しいことは分からなかった。

このお地蔵さんが気になるのは、設置されている場所のことだけではなく、もう一つの理由はブロック塀で作られた四角い箱型の社の上で、ふるちんの男性が読経しているのを見かけたことだ。

それは、二十年ほど前の冬、妹の買い物に付き合わされてNU茶屋町に行った時のことだった。

地蔵堂の上で、赤い布を首に巻いた全裸の中年男性が、般若心経を大きな声で唱えていた。顔は必死の形相に近く、声も絶叫に近かった。

だが、不思議なのは場所が場所だけに、すぐに警備員か警察官が駆け付けそうなのだが、来ない。それだけでなく、近くを歩いている若者やカップルも別に騒いでいないし、なんやあれ?と指さしてもいない。

見えているのが、私たち姉妹二人だけなんだろうかと不安に思いながらも、その場を後にした。

そんな次第で、お洒落な町・茶屋町ではあるのだが、私の場合、地名を聞いてまず連想してしまうのが、その変質者っぽい人と地蔵堂のことなのだ。

最初は番組でも、茶屋町が舞台のこの話をしようかなと思ったのだが、怪談ではないなと思い、結局別の話をすることに決めた。

そして、収録後、藤林温子アナウンサーから、田辺さん何か感じませんか?というようなことを言われた。

意味が分からなかったので「?」となったのだが、彼女には私に何か憑いているのが見えたらしい。ちなみに藤林アナウンサーは第三の目を持つと噂されるほど、視える人だ。

その憑いているもののせいかどうかは不明だけれど、帰りの電車で改札を出ようとすると定期券を失っていることに気が付いた。

「ついてないなあ」と呟くと「ちゃうで」と背後から、というより真後ろから囁かれる声を聞いた気がするが、慣れないラジオ出演の緊張による空耳……だったということにしておきたい。

それ以後、何か聞いたり、特に何かあったりはしていない。ちなみに定期券は、着ていたコートのポケットの中から翌日出て来た。駅の構内でさんざん探したし、何度もポケットの中も確認していたので、その点だけが腑に落ちない。

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