ぬらぬら(大阪府門真市) | コワイハナシ47

ぬらぬら(大阪府門真市)

これは、オンライン怪談会を行なった時に、自動車ディーラーの営業をしているというKさんから聞いた話。

Kさんは怪談会の画面に、血まみれの兎姿のアバターで登場してくれた。

Kさんが何か発言すると、それに合わせてアバターの口がパクパクと動いたので、こういう機能があるとは知らなかった私は驚かされた。

今後オンラインでの取材が主流になるかも知れず、色々と機能や怪談会の進め方についても、これから勉強する必要がありそうだ。

そんなことを考えていると、Kさんのアバターが手を振る動作をして「そろそろ始めていいですか?」と聞いてきたので「もちろんです」と返した。

これは学生時代に、門真に住む高橋という知り合いの家行った時の体験談で、そいつ中学時代からの付き合いで、部活がバスケで一緒やったんです。

高校は別やったんやけど、たまに会ってカラオケとか飯とか行く付き合いやって。でもなんでか、高橋の家には一回も行ったことなかったんです。

バスケ部メンバーで集まってカラオケ行った帰りに、二人で歩いてたら高橋が急に今年閏年やから、暇やったらこれから付き合ってくれへん?って言いだしたんです。

なんにや?と言ったら自分の家の風呂場で、醤油ラーメン食べるのを付き合って欲しいって言うんですよ。

はあ、お前なんやそれって言うたら、そいつの家は閏年になったら新しく家に招いた人と一緒に、風呂で交代で醤油ラーメンを食べんとアカンってルールがあるらしいんです。

理由を聞いたら、こうせえへんと怪我すんねん。なんでか分からんけどって言われて。

ちょっと面白そうやし、個人宅のルールにしても変過ぎるやろって思ったから、付き合うことにしたんですよ。

高橋の家は普通の一軒家なんですけど、なんだか照明がやったら暗いんですよ。それに空気がべったりとしてるんです。

行ったんは、冬やってんけど、梅雨の最中みたいに空気が湿気てて、纏わりつくように重たかったんですよ。

お前、加湿器かけてるんやったら利きすぎちゃう?って言うたら、加湿器なんてかけてへんって。

で、風呂はもう沸かしてるから先に入っといてや、後でラーメン行くからってタオルを押し付けながら言うんです。

なんかちょっと、来たこと後悔しだして、やっぱり帰るって言おうとしたら、高橋の母親が出て来て、お願いしますって深々と頭下げられたんですよ。

それが、女装した高橋じゃないかと思うくらい、似てたんです。お前らクローンちゃうかって突っ込みたくなるくらい。

なんか親に出て来られたら、断りにくかったんで仕方なく俺、言われるままに風呂に入ったんですよ。

しばらくしたら、これ全部食べてなって、ドンブリの縁まで並々とスープの入ったラーメンを持って来たんです。

零さんように受け取って、風呂の蓋の上に置いたんですけど、それが無茶苦茶酷いラーメンやったんです。

見た目は醤油なんですけど、なんか臭いが変やしナルトの端っこが緑色に変色してるし、チャーシューには虹色の油みたいなんがへばり付いてて、見ただけで食べたくないって胃が拒否りたくなるようなラーメンでね、これはないわって。

高橋がニコニコしながら、傍に立って俺のこと見ているのも変やったし。

見た目は悪いけど味はいいラーメンってあるから、もしかしたらって期待して、最初ちょっとだけスープに口付けたんです。けど、うっと吐きそうになって。こんなん食べられへん。もう冗談よせよな、俺帰るからって、風呂から出たんですよ。

そしたら、高橋がすんごい狼狽えだして、これ、残したら俺かお前が死ぬレベルの怪我するから。俺の叔父さんがな、ほんまにそうなってん、とか言いだして。

高橋の母親も、俺フルチン状態やのに風呂までやって来て、この子の言うことほんまです!前の閏年にラーメン食べきれなかったシゲオさんが、トラックと電柱の間に挟まれて亡くなったんです!とか言うんです。

でも、なんか本当に食えるレベルの味じゃないし、もう一口だけ食べたんやけど飲み込むのも辛いくらい不味いというか、変な味なんですよ。

麺も伸びてきていたし、風呂中がそのラーメンの臭さで気分も最悪やったから、俺二人のこと無視して、ささっと着替えて家を出たんですよ。

そして、二人が追って来たら嫌やなと思って、あちこちの角を曲がったり、振り返ったりしながら駅に向かってたら、急に錐で垂直に腹の中から外に向けてブスブス刺してるような、えげつない、もう人生最大級に辛い最凶な痛みマックス級の腹痛に襲われたんです。

これやばいやろって感じたけど、もう携帯電話を取り出して救急車を呼んだり、声出すことが出来ないレベルの、切腹する武士とかのそれ級の命に関わるくらいの苦しさやったんですよ。

東京もんと違って大阪人は優しいとかいうけど、俺の周りにたまたま優しい大阪人がおらんかったんか、じろじろと俺のこと見る人はおったけど、誰も声かけてくれんかって。

痛さを少しでも逃がそうとして、壁に手をついて肩で息してたり、うぐうって脂汗流しながら、唸ってたんです。

そしたら目の前の景色が白黒に見え出して、これアカンこのまま死ぬんかなって思ってたら、口の中からずるぅって何かが出て来たんです。

赤黒い餅みたいなんで、ラーメンに入ってたチャーシューの表面で見た虹色の脂みたいな色が所どころ光ってる、長さが二十センチくらいの変なぐちゃぐちゃしたもんが、俺の口から地面にびちゃって落ちて、近くの排水溝に流れていったんです。

そしたらすうっと痛みが引いて。だけど、痛みはなくなったけど、痛みを逃がそうとして体に力が入ってたからか、全身の筋肉がビキビキに疲労してるの感じるくらい、無茶苦茶疲れてたんで、俺の家は高橋の家からそんな遠くやないんですけど、家まで歩いて帰れなくって、たまたま来たタクシー拾って乗りました。

高校生が自腹でタクシー乗るって時点で、ヤバさが分かるでしょ。

翌日、高橋が俺ん家に来たんでむっちゃ怒鳴りつけたんです。

お前の家に行ったら最悪やったやんけ、マジ許さん!なんやねん、あのラーメン!

帰りに信じられへんくらいキツイ腹痛に襲われて、赤黒い餅みたいなゲー吐いてんぞ!って言ったら高橋が手をポンと打ったんです。

ああ、そっちかあ。お前、運がええなあ、ぬらぬらが抜けるパターンやん。

それ吐いてへんかったら、お前、事故に遭うて死んでたで。いや、滅多にないパターンやから本気でお前、超強運やな、良かったやん。ぬらぬらかあ、そうかあって。

なんか高橋が独りで納得してたんです。それ見て、これは常識が違うというか、何言うても無駄やなって感じたから、それでもう俺、怒るんやめたんですよ。

で、そいつ急に転校しておらんようになったんです。

今もそいつがおったとこ空き家になってるから、こないだ久々に寄ってみたんです。

行ったら野良猫が沢山おって、凄い不気味で生のホラー映画みたいな雰囲気やったんです。

おまけになんか壁とか窓とかに脂みたいな汚れが筋状に走ってて、凄い変な臭いがするんです。

近所の人ら、よう苦情言えへんよなってレベル。

で、後で思い返してみたら、その汚れの色が、俺が吐いた時の変な物体と同じ色やったんです。

だから、あの汚れは「ぬらぬら」が這いまわった痕やないかって……思い返してめっちゃ気持ち悪くなりました。

今も話してて、ちょっとせり上がって来そうになるくらいの、これトラウマネタなんですよ。

この話をしてくれたKさん。

彼は現在、茨木市に住んでいて、ここにはいろんな怪奇スポットがありますよと、後日連絡をくれた。

なので茨木市について、ちょっと調べて行ってみようという気になった。

オンラインでの怪談取材はまだまだ慣れないけれど、コロナ禍の終わりがいつになるか分からない状態なので、今後も続けていくと思う。

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