首が後ろ前の鳩(東京都世田谷区) | コワイハナシ47

首が後ろ前の鳩(東京都世田谷区)

私はどちらかというと鳩が苦手だ。首の無い鳩の死骸をベランダに放り込まれたことがあるせいだ。また、夫から、車に轢かれた鳩がよろよろと歩いてきたときのようすを詳しく聞いてしまって、これも一種のトラウマになっている。

「スタッフが機材車を停めるとき鳩を轢いちゃって、頭が横にブラーンとなったそいつが頸の折れ目から血をピュルピュルと噴き出しながらヨチヨチ歩いてきてさぁ!」

頭がブラーンとか血がピュルピュルとかヨチヨチとか、言わないでほしかった……。

古い友人の某元セクシー女優と久しぶりに浅草で再会して、「鳩が苦手」という話になった。浅草寺の境内で鳩の群れを見かけたことから、彼女の方から言いだしたのだ。

「現役の頃、世田谷区の公園でパッケージ撮影中に近くに鳩の群れがいて、最初はなんとも思わなかったんだけど、しばらくしたら、中の一羽が、首が後ろ前についてることに気がついて、凄く不気味で怖かった!」

そばにいたカメラマンと監督に伝えたところ、カメラマンは「そんな鳩はいない」と言ったが、監督は「見つけた!」と叫ぶや否や持っていた携帯電話で件の鳩を写した。

「でも、その写真はちゃんと撮影できていなかった。問題の鳩がいた辺りに赤い光の玉が写っていて、監督は心霊写真だからって、その場で削除したけど、凄く怯えてた」

それから四、五年もして、彼女は再び同じ公園を訪れた。今度は付き合っていた男性が一緒で、デート中に近くを通りかかり、鳩の件を思い出して彼女が話したら、行ってみようと彼が言いだしたのだった。

「私は反対したんだけど、どうせ見間違いだったんだよ、そんな鳩がいるわけがないと彼が強引で。でも、行ったらまた首が後ろ前の鳩を見つけちゃって、二人で悲鳴をあげて公園から逃げ出したんだよ。それから彼に避けられるようになって、私も思い出すたび吐きそうな気分になるし……」

たかが鳩と思わないでもないが、それが原因で二人は別れてしまった。

恐ろしいのは、監督と彼がすでに此の世の人ではないことだ。

監督は五〇歳のときにクモ膜下出血で急死。

元彼氏は自宅二階のベランダから転落して首の骨を折って即死。享年四三。

友人は不安げに、「私だけ、まだ無事」と呟いた。

シェアする

フォローする