雪女(大阪府) | コワイハナシ47

雪女(大阪府)

雪女というと、北国をイメージする人が多いと思う。

けれど枚方にも、雪女に纏わる話が残っている。

歌人で平安時代屈指のプレイボーイとして知られる在原業平が、惟喬親王に枚方にある渚院に招かれた。業平は渚院で歌会や宴を楽しみ、時には狩りに興じた。

ある朝のこと、業平が目を覚ますと昨夜に降った雪によって辺り一面が銀世界に覆われていた。

その年初めての積雪だったこともあり、雪中の狩りを楽しみたいと思った業平は、弓矢を携えて山へ入って行った。

しかし獲物は一匹も掛からなかった。

獣のいる痕跡は多くあるにもかかわらず、姿を見ることもなく、これはおかしいと感じながらも、業平は山の奥深くへと進んで行った。

結局、獲物を狩ることが出来ず、日暮れ間際に山深くに迷い込んでしまったことに気が付いた業平は、降り始めた雪に足跡を消されないうちにと、全身雪まみれで真っ白になりながら、大急ぎで渚院に戻った。

すると門の前に、透き通るように美しい女が、雪の中に立っていた。

業平は一目で心を奪われ、院の門を潜らず、その夜は女の家で過ごした。

それからというもの、毎晩その女の家に通うようになったのだが、野山に春の兆しが表れ始めると、女は物悲しい憂いを帯びた表情を浮かべるようになった。

そして雪解けが始まると女は伏せるようになり、業平に、もうこの家には決して来ないようにと言うようになった。

他に通う男でもいるのかと問い詰めると、女は悲しそうな顔をして、そうではないと言うばかり。その姿が一層憐れで、業平は離れがたくなってしまった。

やせ細る一方の女の手を取り、業平は都から呼び寄せた薬師と共に看病したが女の体調は一向に良くならなかった。

声を出すことも稀になり、涙をただ流すばかりの女は、それでも透き通るように美しく、業平の恋の炎は消えることはなかった。

雪解けが進み、小川の水量が多くなり始める頃、突然女は淡雪のように消えてしまった。

その場には女が着ていた衣だけが、濡れて残されていた。

それを見て業平は、契りを結んだ相手が雪女であることを知り、嘆き悲しんだという。

しかし、枚方には雪女に出会ったのは在原業平ではなく惟喬親王だという話も残っているそうだ。

惟喬親王が狩猟の時、見失った愛鷹を探していると、円通寺の門前で鷹を指先に止めた美女に出会った。それが雪女であったという。

今では滅多に枚方に雪が積もることはないけれど、黒い長い髪をゆらす乙女が、驚くほどの薄着で雪の日に歩くのを見た。あれは体重がない人のように歩いていたから、人では無かったと思うと、一昨年の怪談会で語ってくれた人がいた。

他にも珍しい雪の日に窓を開けて外を見ていると、天女のような白い衣を纏った女が屋根に腰をかけている姿を見た人がいたそうだ。

枚方に住む人は雪の日に、今でも雪女に遭遇する可能性があるのかも知れない。

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