遊園地で(大阪府) | コワイハナシ47

遊園地で(大阪府)

今は解体されて無くなってしまった、万博公園近くの遊園地であった不思議な出来事を、遠藤さんから聞いた。

「もう何十年も前の話なんですけどね、ある日急に体がむずむずして、一人でモノレールに乗って遊園地に行ったんです。遊園地に来ること自体が久々で、なんで一人で行こうと思ったのか覚えてないんです。乗り物とか嫌いやし。

行ってみたものの、何をしたらいいか思いつかなかったんで、ぶらぶら散歩しながら、みんな楽しそうやなあって周りの人をただ眺めてたんです。

その中でね、出会ったです。あの、もう亡くなっている漫画の神様に」

遠藤さんは興奮気味に身振り手振りを交えて、話を続けてくれた。

人混みの中で見たその人は、古い型の灰色のコートを着ていて、トレードマークのベレー帽こそ被っていなかったけれど、特徴的な形の眼鏡を掛けており、振り返ったその顔は「漫画の神様」と呼ばれるあの人にそっくりだったそうだ。

小さい頃に、遠藤さんは宝塚のイベントで一度だけ、生きていた頃の「漫画の神様」に出会ったことがあり、握手もしたという。

だからその人が、他人の空似だとしても感動して、体が震えたそうだ。

「あの」と遠藤さんが声をかけると、くるりと背を向けて、その人はすたすた歩き始めた。

走っているわけでも、小走りでもない普通に歩いているだけにしか見えないのに、遠藤さんとの距離はどんどん開いて行く。

「先生、先生」と言いながら、遠藤さんは走って、その人を追いかけた。

足には自信のある遠藤さんなのだが、全く追いつくことが出来ず、やがて、人混みの中で見失ってしまった。

遠藤さんは、その日は閉園間際まで、足が棒になるほど隈なく歩いて探し回ったのだが、その人を再び見つけることは出来なかった。

遊園地で見た人が、天国からひょっこり戻って来た「漫画の神様」かどうかは分からないけれど、遠藤さんは忘れられない不思議な体験として、今でも追いかけたあの日を思い出すだけで胸が熱くなるという。

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