小説家の三輪チサさんが主宰する「ひらかた怪談サークル」という集まりがある。
これはその会で、参加者のKさんから聞いた話。
「かなり前の話なんですけど、高槻の有名な心霊スポットの〝タチソ〟に行こうってことになったんです。
タチソは〝高槻〟〝地下〟〝倉庫〟のそれぞれの頭文字をとってつけられた暗号なんです。
崖に穿った長いトンネルみたいな場所で、秘密施設として建設されて、第二次世界大戦中に航空機のエンジンなんかを作っていたらしいんです。
タチソは無茶苦茶、労働環境が悪くて、大勢の方が落盤で生き埋めになったりしたようで、幽霊を見るとかいう話を頻繁に聞く場所なんです。
そこに知り合いと行こうっていうことにしたんですが、怖がりの子が一人おったから、その子には心霊スポットに行くなんてことは言わないで、洞窟探検に行くよとだけ伝えたんです。
みんなで地獄谷ってところから地下倉庫に向かったんですが、谷が崩れた跡があって、通るのは結構大変でした。
で、一緒に来た怖がりの子が、急にその場で耳を塞いで蹲ったんです。どうしたの?って聞いたら、足音がする。沢山のざっざっざっざっと揃った足音が聞こえるって言うんです。
タチソがどんな場所なのか知らせないで連れて来たのに、そういうことを言われて怖くなったので、そのまま車で帰りました」
現在もタチソは高槻に残っている。
秘密施設として建設されたからか、資料もほとんど残されておらず、どれだけの長さや広さなのか不明らしい。
タチソの奥には今もなお、人知れず亡くなった方の遺体がそのままで残されているという話を聞いたことがある。
中は蟻の巣のような作りで光も入らず、迷ったら外に出るのは富士の樹海よりも困難らしい。
崩落の危険性も高く、人が通りかかる確率もとても低く、迷路のような内部で実際に遭難事件もあったとそうなので、現在は立ち入り禁止となっている。